残りの2個のソフトウェアロボットは、多様な業務を担当するマルチタレントの“働き手”である。具体的には、新規契約の登録処理を除く25業務のうち12業務を片方のソフトウェアロボットに、13業務を他方のソフトウェアロボットに覚えさせている。さらに、新たな業務を人間が操作して覚えさせる作業も行う。平均すると1カ月弱で1つの業務を習得させることができるという。

 日本生命は複数の業務を覚えさせた2個のソフトウェアロボットに、1日の作業時間割を組んで処理を指示している。「午前9時から午前10時までは住所変更」「午前10時から午前11時までは保険証券の再発行」といった具合だ。こうすることで、個々には小さな複数の業務をソフトウェアロボットが時間を有効活用しながら稼働し、多様な業務に従事する人の仕事をサポートするという、RPAのもうひとつの利点を享受できる。

 このように時間割を設けているものの、ソフトウェアロボットが所定の時間に自動で業務内容を切り替えるわけではない。業務量が多い日には、予定通りに事務処理が終わらないことも考えられる。そこで当該時間帯に完了すべき処理を終えているかどうかを、原則として画面上で人が確認したうえで、次の時間割に移るかどうかをソフトウェアロボットに指示している。

画面設計の負担軽減の可能性も

 ソフトウェアロボットの導入効果としては、画面設計の負担軽減も考えられる。

 新規に稼働したシステムや新しい追加機能の操作画面の設計がよくないと、日常の利用者がとまどって効率が落ちたり、操作ミスが生じやすくなったりする。場合によっては使われないシステムになってしまう。

 日本生命でもシステムの画面設計には十分な労力と時間をかけている。だが、ソフトウェアロボットの利用を前提とするなら、その手間を多少軽減できる可能性がある。人間が実際に画面を操作するのは、基本的にソフトウェアロボットに業務を覚えさせるまでの少ない回数で済む。それが終了すれば、ソフトウェアロボットは画面の使い勝手に左右されず、入力ミスもせずに黙々と業務を処理していく。入力項目が多い場合、これまでなら画面を複数に分け、ページを切り替えて操作を完了する画面設計にするケースが多いかもしれないが、ソフトウェアロボット前提であれば、上下に長くスクロールするような単一画面の設計にしても大きな問題にならない。

 その点を踏まえると、既存システムのうち、画面設計に改善の必要がある業務について、手間をかけてシステムを改修するのではなくRPAの導入を検討するのも一つの手だろう。