同社の窓販事業は、新契約件数が年間7万件にのぼることもあった。今後も保有契約数が増加していくと、契約者の住所変更手続きも増えると予測されるが、それに合わせて「担当者の人数を単純に増やして対応し続けるのは現実的ではない。そうかといって新たな機能を基幹系システムに追加するには、コストと時間がかかりすぎる」(金融法人契約部金融法人事務開発Gの藤吉亮輔担当課長)。
懸念したのは、業務負荷の増大だけではない。複数の担当者が分担して住所変更の業務を進めていた従来のやり方を見直さなければ、事務処理の品質維持が難しくなる可能性もあった。
従来、住所変更の業務は4人の分業制になっていた。まずコールセンターのオペレーターが契約者から住所変更の連絡を受け、その内容を受付用のシステムに入力する。続いて、オペレーターとは別の担当者が入力内容を確認のうえ、新住所を印字した記録紙「声カード」をプリンターで出力。その後また別の担当者が、契約者情報を管理するシステムの操作画面を立ち上げ、声カードの記載内容に基づいて新たな住所をシステムに登録する。そして最後に、システムへの登録内容に誤りがないか、4人目の担当者がチェックして住所変更の手続きを完了する。
日本生命はこの作業のうち、オペレーターが住所変更の依頼を受け付けた後の一連の処理をソフトウェアロボットに任せるようにした。具体的には、声カードを出力する代わりに、ソフトウェアロボットが住所変更の内容をCSV形式のデータとして自動で読み込み、住所管理のシステムの操作画面を自ら起動して郵便番号や都道府県名などを所定の項目に入力したあと変更を登録する。
そもそも受付用システムと契約者情報管理システムを連動させれば済むのでは?と感じるかもしれない。しかし、両者とも非常に大きな基幹系システムで、それに連動機能を追加するには、開発やテストに大きな労力がかかる。このため、手作業で対応していたのだ。
RPA導入の結果、従来は1件あたり3分ほど要していた住所変更の処理が、30秒程度に短くなった。加えて、デジタル化した情報をソフトウェアロボットがそのままシステムに自動登録するので「入力ミスが生じる可能性が極めて小さくなり、登録内容のチェックをしなくて済むようになった」(藤吉氏)。