RPAの導入で大切なことは、それとは逆のアプローチである。既存の業務のやり方が仮に非効率だったとしても、まずは人がパソコンで行っている作業にRPAを適用して業務を自動化してみる。仕事のやり方を変えなくても、ソフトウェアロボットに作業を任せることで省力化の効果を出せることが数々の事例から明らかになっているのだから、人手に頼ったままの業務の量を何しろ減らすのが先だ。
自動化の対象となる既存業務の内容を確認したら、ソフトウェアロボットに実行させるためのプロセスを整理し、そのプロセスを忠実に実行するソフトウェアロボットをRPAツールで開発する。一つの業務あたり1カ月半ほどで次々とソフトウェアロボットを作り、さみだれ式に動かしていく。いくつもの作業をソフトウェアロボットにやらせる中で、業務の進め方を大きく見直す必要性が見えてきたら、その時点で本格的な業務改革を取り組んでも決して遅くはない。
自動化対象が“小粒”な業務でも成果を上げていけば、業務改革の機運は高まりやすくなる。実際に先日、当社でRPAの導入を支援したユーザー企業を1年ぶりに訪問したところ、次のような場面を見た。当初は導入に難色を示していた事務作業担当者が、「この書類のフォーマットを変えてくれたら、こちらの仕事がこう変えられるので、お客様にフォーマットの変更が可能かどうか確認してもらえないか」などと営業担当者と折衝していたのだ。
バックオフィスの事務処理担当者がフロントオフィスの営業担当者にプロセス改善を提案するなんて、あまり考えられないことだ。しかし、RPAによる省力化で余力を得るとともに、ソフトウェアロボットの活用を通してプロセス改善の余地を具体的にイメージできるようになったバックオフィスの担当者は、部門を超えて業務改革に取り組むプロセスイノベーターに生まれ変わった。この例のように、RPAには、生産性向上に対する従業員の意識を高め、小さな成果がさらに大きな成果につながるといった効果が期待できる。