そのため、社内の人材が高付加価値の業務にもっと集中できる環境を整えたい、との経営者の意向が強まっている。具体策として、業務の自動化を推し進めることで、付加価値の低い定型業務から優秀な人材を解放する。そうしたニーズにもRPAがうまく適合した。

 三つめは、デジタルトランスフォーメーションの要求が日増しに高まってきていることだ。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、ビッグデータなど、新たなデジタルテクノロジーの活用に踏み出さなければ、デジタル化で台頭してきたディスラプター(破壊的創造者)との競争に勝てない。そういった危機感からデジタル化の推進組織を設ける国内企業が目立って増えている。ところが、想定したような投資対効果を出せているデジタル化推進組織は必ずしも多くはない。

 デジタル化の成果を早く見せたい――。そのような人々が着目したのがRPAである。例えば、複合機でスキャンした書類をOCRツールで読み取ってシステムにデータを自動入力するなど、人手に頼ってきた作業をソフトウェアロボットによってデジタル化する。その結果として、デジタル化の定量的な効果をすぐに示せることが分かり、RPAはデジタル化の推進に積極的な国内企業から幅広く注目を浴びるようになった。

RPA導入で大切なこと

 働き方改革や人材活用、デジタル化など主たる目的は個々の企業によって違っても、国内企業のRPAの導入意欲は引き続き強い。現に、2018年に入ってから4月末までに当社に寄せられた引き合い件数は、RPAが大ブームとなった2017年を上回る勢いで増えている。

 少し心配しているのは、大掛かりな業務改革ありきでRPAの導入に臨むケースが増えないか、という点だ。既存の業務をきっちりと見直してからソフトウェアロボットを動かす、といったウォーターフォール型のシステム導入アプローチは、RPAの導入でありがちな、典型的な間違い。そんなことをしたら、成果を上げるまでに何年かかるか分からない。