そこで広島ロボットセンターを活用し、煩雑になりがちな事務処理の生産性を高めてもらう。具体的には、観光業、製造業、流通業などがパソコンで処理する発注、受注、発送の作業を、人に代わってソフトウェアロボットで担う。そうすることが結果的に地域の産業活性化につながっていくはずです。

ITエンジニアが地元で活躍できる機会を創出

 もう一つの目的は、県内のIT産業の活性化です。このところ、東京をはじめとする大都市でシステム開発の仕事が多く、県内のIT企業からも多くのエンジニアが現地に赴いてプロジェクトに従事しています。しかし、システム開発需要が一段落したらどうなるでしょうか。県内に仕事がないと、エンジニアが戻ってきても活躍する機会がありません。広島をソフトウェアロボットの聖地にできれば、そうしたエンジニアが県内に残ってIT産業を盛り上げていけます。

 IT産業の活性化は、関連産業の新たな需要を創出します。一つの例が教育事業です。ソフトウェアロボットを導入・活用するために、RPAツールの使い方をユーザー企業にレクチャーする仕事が生まれる。教育のための教材コンテンツを制作するニーズも出てきます。RPAツールのレクチャーに従事する講師を育成するにあたり、ソフトウェアロボットインストラクターの認定制度を整備することも視野に入れています。

 そんなに高度な資格制度のようなものは想定していません。RPAツール活用のハードルを必要以上に引き上げることになれば、ソフトウェアロボットの普及を阻害し、地域産業やIT産業の活性化が遠のきかねないからです。広島ロボットセンター構想では、子育てが一段落した女性やシニア世代が講師として活躍できる機会を生み出したいと考えています。

クラウドサービス開始で予想以上の問い合わせ

 広島ロボットセンターのプラットフォームとして、エネコムがソフトウェアロボットのクラウドサービス「エネロボクラウド」を始めたのが2017年11月。それからほとんど間を置かずに、見込んでいた以上の引き合いが寄せられている状況です。

 多くは、自社でソフトウェアロボットのサービスを提供するプラットフォームとしての利用を希望するシステムインテグレーターやコンサルティング会社からの問い合わせです。一方、当初想定していなかった業務用パッケージソフトのベンダーからの相談もありました。エネロボクラウドのプラットフォームに業務用パッケージを実装し、ソフトウェアロボットとセットで提供できないかといったもの。データ入力を自動化すれば、業務用パッケージの利便性を高められると期待してのことです。