JDドットコムは、そのMUJINコントローラを物流センターに大量導入。さまざまな商品をピッキングするロボットアームの自動制御に活用している。また国内ではアスクルがMUJINコントローラを使い、物流センター内の商品ピッキングをロボットアームで自動化した。

写真1 MUJINの産業用ロボット制御装置「MUJINコントローラ」 (MUJINがYouTubeで公開している動画より)

 これまで、ロボットアームを動かすには、作業内容に合わせてロボットの関節の動作を細かく設定する「ティーチング」が必要だった。テーブルに置かれた茶碗を持つときに、肩より下に腕を下げた状態で、肘を少し延ばし、手首を上向きに軽くひねるというように、人間なら無意識に行っている動作をロボットにあらかじめ一つひとつ教え込まなければならない。

 ロボットがモノをつかむ瞬間、アームの先端の位置(手先の位置)はX軸・Y軸・Z軸の座標で決まり、先端の姿勢(手先の向き)はX軸・Y軸・Z軸を回転軸とする角度で定まる。ロボットアームのティーチングとは、そのポジションをアームの先端が正確にとれるよう、複数の関節の動きを調整してロボットに記憶させるイメージだ。

 作業内容によっては数千種類もの動作を覚えさせる必要がある。もちろん、関節ごとの稼働可能範囲(角度の制限)や、作業エリア周辺の壁や柱といった障害物との位置関係からロボットの動きを干渉する「特異点」も考慮しなければならない。

 そのため、自動化を図るためにロボットを設置したとしてもすぐには使えず、「ティーチングだけで1年ほどを要する例が珍しくない」と、MUJINの山内龍王氏は話す。しかも、それだけの手間をかけても、扱うモノの形や物流センター内のレイアウトなどが少しでも変われば、ティーチングのやり直しが生じてしまう。

 MUJINコントローラは、このようなティーチングが必要ない「ティーチレス」を製品の特徴として掲げる。ロボットの導入時に避けられなかった緻密なティーチングの負担をなくし、「早ければ2週間程度でロボットを現場で稼働させることができる」(山内氏)という。現に、JDドットコムの大型物流センターのプロジェクトでは導入期間が4カ月ほどだったが、MUJINはMUJINコントローラを難なく導入できた。

AIを使ってロボットアームが自ら動作する

 MUJINコントローラがティーチレスであるのは、人工知能(AI)技術「モーションプランニングAI」のおかげだ。MUJINコントローラを接続したロボットアームは、作業エリアに設置したカメラ「MUJIN3Dビジョン」で撮影した画像を基に、刻々と変化する目の前の状況を3次元で正確に認識する(MUJIN3Dビジョンは1ページのトップ画像を参照)。そしてピッキングするモノの形状や姿勢(向きや傾き)、コンテナ内にある他のモノとの重なりなどを見定め、特異点を踏まえた最適な動作方法を瞬時に考え出す。