そうしたなか、サプライヤーと完成車メーカーが一体となってRPAツールの導入を検討する動きが出てきている。納入先企業が提示した計画や予定を定期的に閲覧し、システムに自動入力する汎用的なソフトウェアロボットを開発して、複数のサプライヤーに展開すれば、自動車製造のサプライチェーン全体で業務効率の底上げが期待できる。

ソフトウェアロボットを“人材派遣”

 RPAツールの利点の一つは、業務量の大きな増減や短期集中業務などに対応しやすいことだ。

 生産年齢人口の減少に伴って人材採用に難儀しかねない中堅・中小企業を支援するため、RPAツールを活用した新手の“人材派遣”ビジネスに乗り出すところも出てきた。中国電力子会社のエネルギア・コミュニケーションズ(エネコム)である。

 同社は2017年11月、ソフトウェアロボットをネットワーク経由で提供するクラウドサービス「エネロボクラウド」を始めた。「Excelの所定のカラムにデータを入力する」といった処理を1ステップと換算し、ステップ当たり月額0.05円でソフトウェアロボット「エネロボ」を企業に貸し出す。

 ユーザー企業は最初にエネロボに作業を覚え込ませれば、業務の繁閑に応じてエネロボの台数を柔軟に増減できる。必要な時に必要なだけ、作業のやり方を知っている労働力の確保が可能になるわけだ。期末や年度末などの繁忙期にエネロボを夜通し稼働させることもできる。決算処理のように特定の期間だけ必要な業務なら、当該業務を教えたエネロボをその期間だけ利用するといった使い方も可能だ。

 人材派遣や短期雇用などで担当者が入れ替わると、作業手順やノウハウの継承ができないという課題がある。従来マニュアルがなく明文化されていなかった業務をRPAツールに蓄積することで、ずっと同じ人物を業務に張り付けたり、人が変わるたびに業務を説明したりする手間が省ける。

 このように、RPAツールは使い方次第で企業を大きく変える可能性を秘めている。業務の最前線で事務処理などに当たっている社員から「ロボットの手も借りたい」という声が上がっていないだろうか。そうした現場の声を吸い上げることが、ホワイトカラー業務におけるデジタル変革の第一歩になる。