RPAツールは画期的な新技術というよりは、少しずつ進化してきた既存技術を組み合わせたものである。ただ、機械学習や自然言語処理など最近急速に進展しているAI技術も取り入れ始めている。これにより、シナリオにない想定外あるいは例外的な処理にも対応するなど、さらに柔軟な処理ができるようになるだろう。これも大きな注目点だ。

 RPAツールの適用領域は幅広く、全社規模での業務効率化によって人材の最適配置に果たす役割は大きい。生産計画や調達計画の立案、商品発注、交通費精算などの経理処理、時間外勤務の申請承認といった労務管理など、さまざまな業務への適用が期待されている。

 「一つひとつの業務量が少ないために大きな効果が見込めないとしてシステム化が見送られてきた業務が企業にはたくさん残っている」。RPAテクノロジーズの大角暢之社長は、こう指摘する。同社はRPAツール「BizRobo!(ビズロボ)」を開発し、メガバンクや生命保険会社など国内100社以上に提供している。

 ビズロボを導入した企業の中には、1人の社員が2日間かけていた月次レポートの作成作業を自動化し、10分程度に短縮したケースがあるという。1カ月のうち2日分の業務効率化だが、効果は決して小さくない。レポート作成を自動化しただけで年間24日分、すなわち約1カ月分の営業日数に相当する労働力を他の業務に振り向ける余力を生み出した計算になる。

 これまで効率化、自動化が難しいと思われていたホワイトカラー業務にも、デジタル変革の波が押し寄せてきているのだ。

企業の枠を超え、サプライチェーン全体で業務効率を底上げ

 RPAツールはアプリケーションや担当者だけではなく、複数の企業にまたがる作業に適用することもできる。

 2000年前後に起きたサプライチェーン改革の流れに乗り、大手製造業は需要予測に基づいて販売や生産、調達、物流の計画を最適化するSCM(サプライチェーンマネジメント)システムを導入し、欠品や過剰在庫の解消を図ってきた。しかし、多くは企業内の改革が主で、社外のサプライヤーを含むサプライチェーン全体では現在も煩雑な手作業が残っている。

 例えば、何階層にもわたるサプライチェーンを構成している自動車産業。完成車メーカーなどが立てた短期や中期の生産計画や発注予定をパソコン画面で参照し、データを自社の生産計画システムなどに手作業で入力している中堅・中小のサプライヤーは珍しくない。最近は、系列外の企業にも取引先が広がるようになり、データを参照・入力するサプライヤーの負担は重くなりつつある。