複数サービスをまたぐ本人確認が可能に

 FraudAlertの最大の特徴は、クラウドに蓄積した本人らしさを、複数のサービスで参照できる点です。A銀行のオンラインバンキングの二要素認証に100回連続で成功しているユーザーアカウントがあった場合、そのログイン元の端末OSやロケーションが合致すれば、B銀行へのログインでも本人らしいとみなす、といった使い方が可能です。

 反対に、A銀行が管理する多数のユーザーアカウントへ、短時間に繰り返しログインを試みた端末は怪しいと判断。FraudAlertを利用するA銀行以外の事業者が、当該端末からのログインをはじくことができます。

――最後にこれからの展開を聞かせてください。

島津 まずは、ブルーオーシャンの国内市場で、FraudAlertを拡販します。類似サービスはいくつか存在しますが、いずれも外資系ベンダーのもので、導入と運用に多額の費用がかかります。そのため大手企業以外、セキュリティ対策はほとんど手付かず状態で残っている。

 AIを用いて本人らしさの判断を完全自動化し、10人強の小さな所帯で運営している当社は、月額数十万円からと、競合他社と比較してリーズナブルな価格でFraudAlertを提供できます。月間の認証回数が800万回を超えるような大型事業者のケースでは、競合ベンダーの100分の1程度の費用でセキュリティ対策を講じられる計算です。2018年末には国内で圧倒的なシェアとなることを目指します。

 並行して海外展開も準備しています。2018年中にシンガポールに事業拠点を設立することを計画しており、多くのユーザーを抱える金融や通信事業者を対象に、FraudAlertの実証実験を進める予定です。

 加えて、自動車やATM(現金自動預け払い機)などIoT分野のセキュリティ対策に乗り出す計画も進行中です。2018年はますます忙しくなりそうです。

島津 敦好(しまづ・あつよし)氏
カウリス代表取締役CEO
京都大学卒業後、ドリコムに入社。セールス担当として、同社のIPO(新規上場)を経験。2010年にオンライン英会話学習のロゼッタストーン・ジャパンに入社。法人営業部を立ち上げる。2014年にCapyに入社し、事業部長として不正ログイン対策のソリューションを大手企業に提案。同時にメディアを通じたセキュリティ意識向上の啓蒙活動を実施。2015年12月、カウリスを設立した。