今回の実証実験では、1台のバスに装置を設置し、13日間で10人の運転手が交代で乗っていた。この13日間で、290件の事象がレポートされたという。これらの中に、ヒヤリ・ハットにつながる可能性のある事象が含まれていると予想され、後の分析や社内教育などに活用されることになる。

KDDI ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟(はらだ・けいご)氏。

 小杉氏によると、口頭で乗務員から報告を受けていた頃は、3~4人に聞いて1件出てくるかどうかで、収集自体が非常に難しかったという。今回の実験における290件のレポートのすべてがヒヤリ・ハットにつながった訳ではないが、口頭での報告に比べると、検出の効率は大きく上昇している。

 さらに、原田氏によると、ヒヤリ・ハットにつながる可能性のある事象が起きる時間などにも、傾向が見られたという。

「特定の時間帯、特に朝と午後一番が多かったという、時間ごとの傾向が取れました。また、この人はヒヤリ・ハットが多いとか、この人は少ないとか、乗務員の方ごとの傾向も見られました」

事故が起きる前の段階を知る

 今回得られた、ヒヤリ・ハットにつながる可能性があると判断した事象のデータは、今後、映像教育などで使っていくという。

異常を検知したレポート画面。乗務員が下を向いたため、設定された枠から顔が外れてしまっている。
拡大画像表示

「免許センターなどで事故の映像を使ったりすると思いますが、あれは事故が起こってしまった後の姿です。その前の段階でどのようなことが起きているのかを、映像で訴えかけていきたいと考えています」(小杉氏)

 今回は一般の路線バスでの実験だったが、車内での人身事故の予防、また高速バスなどでも応用していきたいという。

 人間では見過ごしてしまう、意識下の出来事をIoTなどの技術を駆使して、明らかにしていく。そのような取り組みが、今後のバスなど公共交通機関の安全に大きく貢献していくだろう。