また、ハード面では、レーダーを備えた衝突軽減ブレーキや最新の車両の導入など、徹底した対策に取り組んでいるという。車内にはドライブレコーダーやデジタルタコグラフなどの安全機器もあり、そこで記録されたレポートを見て、必要な場合は乗務員へ指導を行っている。

 だが、乗務員ごとの個性や差はあれ、みな職業ドライバーとして普段から丁寧な運転に取り組んでおり、急ブレーキや急発進など見て分かるような危険な事象はまず出てこない。一日の業務後に、口頭で報告を聞くこともあるが、乗務員の記憶にも限界はあり、特に午前中に起きたことは正確に思い出すのは難しい。

 では、事故につながりうる予兆となる事象や、ヒヤリ・ハットの前段階として存在しうる「ヒヤリ・ハット予備軍」の事象は、どのようにして検出し、分析すればいいのだろうか。

 今回の小湊鐵道とKDDIの実証実験は、まさにそこが狙いだ。ヒヤリ・ハットにつながる事象があるかもしれないという仮定の下、デジタルタコグラフとカメラを組み合わせ、乗務員の顔の位置や動き、表情を細かく察知し、挙動を拾っていくというものだ。

顔の挙動と表情から「ヒヤリ・ハット予備軍」を検知

 実証実験の仕組みと流れを、KDDI ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟氏が説明する。

実証実験の構成。

 仕組みとしては、運転席の横にカメラを付け、5秒に1回撮影する。この画像を、画像解析サーバーに送り、ここで顔の位置のずれを検出する。顔のずれが見つかれば、「ながらスマホ」やよそ見をしていた可能性があるということだ。なお、乗務員にセンサーなどを取り付けるということはしていない。

バスの運転席に取り付けられたカメラ(画像中央)。このカメラで、乗務員の顔の動きや表情を撮影する。
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 さらに、顔の位置だけでなく表情まで検出できるので、驚いた表情など普段と違ったことが起きた場合は、デジタルタコグラフを起動し、バスのスピードや位置情報、時刻を付けてレポートする。実際には、バスが動いているときのよそ見などが重大なヒヤリ・ハットにつながるとみて、車速のデータと掛け合わせ、バスが動いているときの事象のみをレポートしている。