今後は技術開発をさらに進め、今年中には資材を置く場所まで自律走行するレベルに引き上げていく意向だ。大規模なビルの建設現場では、朝礼後、作業場所までエレベーターで人が上がるまでに1時間から2時間かかるケースもある。その後に資材をエレベーターで運ぶことになるが、人と資材の移動だけで時間がとられてしまい、生産性を向上するにも限界があった。

 クローラーTOにエレベーターの制御も含めた自律走行技術を導入できれば、例えば夕方以降の作業終了後に自動で資材を運ばせておくという使い方ができる。翌朝作業員が現場に来れば必要な資材が目の前にそろっているので、すぐに取り付け作業が進められる。「こうしたロボット技術が実現できればこれまでにない生産性アップが見込めるので、工期の短縮、ひいては顧客満足度の向上にもつながる」(朝田伸一・西日本機材センター所長)。

右から、建設現場のデジタル化戦略に携わっている森田将史生産本部生産企画部部長(機械電気担当)、現場作業を支援するロボットの導入と事業化を指揮する西日本機材センター所長の朝田伸一氏、ロボットの企画開発に携わる永田幸平氏(西日本機材センター機械化施工推進グループ主任)と櫻井豊樹氏(西日本機材センター機械化施工推進グループ長)、ロボット開発のパートナー企業である岡谷鋼機の下河原渉企画本部経営企画部プロジェクトチームスタッフリーダー

「あらゆる手段」で精度を向上

 これら2つのロボットは、全体構想の端緒にすぎない。竹中工務店はこうした個々の技術を磨きながら、2020年から2025年頃をメドに「現場空間のICT化」を実現する意向だ。

 具体的には、現場におけるモノの動きをデータとして取得し把握できるようにする。資材がいつ、どこに、どのように入ってきたのかを把握するのと同時に、資材が図面通りに取り付けられていることを検証できる仕組みにする。これにより、建設作業全体のプロセスを最適化しようというわけだ。

 建設現場、特に建物の中に入るとGPSが使えないこともあり、どのように実用的な精度で資材の位置や状態を把握できるようにするかが課題である。竹中工務店の森田将史・生産本部生産企画部部長(機械電気担当)は、「(画像処理や無線ICタグなど)あらゆる手段を活用する」と語る。基本はウエアラブル機器や現場に設置したカメラで画像を取得する方法を採用するほか、自律的に動作するロボットで現場の画像を取得する方法も検討中だ。これにAI(人工知能)を適用しながら、より精度を高めていく。