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飛田：今回、私たちが目指したのは、全く新しいノートパソコンの開発でした。15インチ、メインの用途で使えるオールインワンのノートパソコンといえば、最も人気のある市場なのですが、なぜかそこにワクワク感が無い。デザインは少しずつ進化しているものの、それほど変わらない。そこにドラスティックな変化をもたらし、ワクワク感のある製品にしたかった。それがプロジェクトのスタートでした。よい意味で「NECっぽくない」ものが作りたかった。もっと言えばNECとしてこれまで継承してやってきたものを壊したいと考えました。

そのためノートパソコンを再定義するところから始めようと決め、すべてを一度リセットして、ゼロからスタートしました。

ポイントは「デザイン」「速さ」「心地よさ」

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飛田：最もこだわったポイントは「デザイン」です。ワクワク感を生み出すには、ひと目で違いが分かるデザインにする必要があるからです。お客様が店頭に行った時に「あれ、今までとはぜんぜん違うものがあるぞ。え、これノートパソコンなの? こんなコンパクトなのに15インチなんだ」という反応を目指しました。

もう一つの大きなポイントが「速さ」。これは結果的に「NEXT」の最大の特長となったのですが、実際に使った時に実感できる速さを求めました。使っていただいた時に、「今まで使っていたものはいったい何だったのだろう？」と感じるくらいの。だからスペックは最新・最高のものを詰め込みました。

最後のポイントが「心地よさ」です。この点はNECが以前から目指していた点でもありますが、使っている間の心地よさ、つまりユーザエクスペリエンスの追求です。「見た目は変わっても、やっぱり使いやすさはNECだよね」と感じてもらえることを目指したのです。

インテリアのような、日常に溶け込むデザイン

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前村：これまでNECは結構長い期間、「光沢感のある美しさ」をデザインしてきました。それはパソコンが「マシン」であり、ある意味緊張感を持って接するものだったからです。嫌でも目がいくものとして飾り立ててあげる必要があった。

しかしパソコンはもう特別な存在ではありません。特にノートパソコンが家庭に浸透し、リビングや食卓に置かれている光景は当たり前になりました。つまり、主張するデザインではなく、日常的にあるもの、馴染むデザイン、溶け込むデザインにする必要があると考えました。まるでインテリアのような、美しいけれど日常に溶け込むデザイン。インテリアだから10年20年経っても古くならない違和感のないデザインを目指しました。

置いてある「紙の束」、めくると「窓」

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前村：では、日常に溶け込む、インテリアのような古くならないデザインとはどういうものなのか。一つだけ明確なのは、シンプルであるということ。「余計なもの」「華美なもの」が無く洗練されているということだと考えました。洗練されているものは古くなりにくいのです。

一方で機械、機器ではなく、アナログ的な昔からあるものに見えるものにならないかという点も意識しました。使っていない時は空間に溶け込むような自然さ。

そこでイメージしたのが「紙の束」です。テーブルや机の上に置いてあっても自然で違和感が無いし、何よりとてもシンプルです。さらにイメージしたのは「窓」です。パソコンを開いて目にするディスプレイは、作業中ずっと見つめるものです。そのディスプレイにも日常に溶け込む存在であって欲しいと考え、「窓」をイメージしました。

紙が置いてあり、それを広げると窓がある、そんな体験を生み出したかった。

わざとらしい加工や演出をしたくなかった

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前村：細部にもその思いが現れています。通常は薄く見せるために筐体の角を落としたりするのですが、今回は意図的に薄く見せようといったわざとらしい演出を排し、あくまで「紙の束」のような自然でさりげない存在にしたかったのです。

直線とフラットな面を基調としていたので、開けた時もその印象を保つため、曲線や三次的曲面を避けました。それが全体的な雰囲気、バランスを崩さない一因になっていると思います。これは結果的に、NECの伝統的な構成でもある二枚の薄い板が重なっているというイメージであり、実は「NEXT」が一番端的にそれを表現していると感じます。

まるでスマホのような手軽さをパソコンにも

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飛田：ノートパソコンを再定義することからスタートした「NEXT」では、使う人の感覚も変えたいと考えました。スマートフォンは使いたい時にすぐに使えます。あまりにもすぐに立ち上がるので「起動」という感覚さえ無い方がほとんどでしょう。パソコンはそうはいかない。やはり「起動させよう」という感覚がある。パソコンに向かう時、使いたい時は「よし、やるぞ！」という意識が必要です。スマホのような気軽さ、手軽さが無い。

そこで「NEXT」では、電源ボタンと指紋認証ログインを同一のボタンとし、起動とログインを一度に行えるようにしました。開発は大変でしたが、シンプルさを追求するデザインの面でも一役買っていると思います。

こだわりのためにラクな道は絶対に選ばなかった

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前村：「NEXT」は、パソコンを開いたときの感覚や体験も変える必要がありました。閉じた状態が「紙の束」で、開いたら「窓」。しかもその「窓」は見ていてもずっと飽きない、疲れない「窓」。その向こうに見える風景に集中できる没入感があるものにしたかった。

そこで採用したのがフラットデザインと狭額縁ディスプレイです。狭額縁ディスプレイは集中力を高めてくれる効果があるほか、画面サイズはキープしたまま、筐体そのもののサイズをコンパクトにできるメリットがあります。

ただ、それを実現するのにさまざまなハードルがありました。シンプルな「窓」にするために、どうしても画面のガラスを縁まで持っていきたい。今回これを実現するため、画面の下でガラスを終わらせるのではなく、奥までつなげています。実際に目が届く範囲ではありませんが、こうした細部のこだわりによって、製品としての完成度を上げています。ガラスを四角く切る通常の手法に比べ、設計の難易度は当然増しますが、われわれは楽な道を選びませんでした。

一方で狭額縁にすると、一般に強度が低下する傾向があるため、通常は補強部材を入れるのですが、そうすると厚みに影響してしまいます。開発から強度の面で「何ミリ欲しい」という要望があっても、「他の部材を使えないか」「構造自体を変えられないか」など、コンマ数ミリ単位のせめぎ合いで調整し、強度を保ちながら薄さのある狭額縁をキープしました。

「引き算の美学」を徹底的に追求

前村：狭額縁も含めて「引き算の美学」に徹した結果、従来の15インチパソコンより一回り小さい「シンプルでコンパクト」、かつ美しいパソコンになりました。開くとキーボード以外何もありません。電源ボタンすらありません。ユーザーに新しい体験を提供できたと思います。

NECのロゴにも「引き算の美学」があります。「NEXT」は画面への没入感を高め、集中力を高めるため、色の無い彫刻表現にしています。最初のモックアップではロゴが通常通りに入っていましたが、無い方が美しいと判断し、取ることにしました。

NECとLAVIEの関係性にも目を向けました。LAVIEは彫刻で光沢のあるパーツを入れて立たせ、「LAVIE」を上位に置くメッセージを表現したんです。 社名ではなく、ブランド名を立たせたのは初めてです。

ユーザーファーストで考えると安心感は切り離せない

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飛田：デザインではシンプルかつコンパクトにこだわりましたが、一方機能面では、日本のノートパソコン市場で一番高いニーズである「安心感」を担保したいと考えました。「これを買っておけばなんでもできる」という安心感。つまり、「オールインワン」であることを大命題に据えました。

「オールインワン」とは、ODD（光学ドライブ）、大容量のHDD、テンキー、USBポートなど、基本的な機能が全部そろっている状態のこと。いわゆる“全部盛り”です。なのにシンプルでコンパクトにしたい。根本的に矛盾したテーマにあえて挑みました。

通常だとどちらかを諦めざるを得ませんが、われわれは諦めませんでした。例えば、仮にODDを無くせば薄くできます。他社の15インチノートパソコンで、「NEXT」より薄いものはあります。でも、われわれはODDを捨てたくなかった。ユーザーの安心感を損なうことになるからです。

ほかにも「NEXT」は速さを追求するためSSDを採用しましたが、同時に1TBのHDDも内蔵しています。SSDだけのモデルもある中で、なぜかと言えば、ひとえにデータ容量が大きいことが安心感につながるからです。

「NEXT」はSDカードのスロットもあるしHDMI端子もある。決して安い買い物ではないですから、一度買ったら長く使ってもらいたいのです。

ただ、実現には苦労が伴いました。“全部盛り”にすれば、どうしてもシステム側のサイズが大きくなってしまう。LCD（ディスプレイ）側とシステム側は同じサイズでつくる関係上、システム側が大きくなるとLCD側も大きくなってしまい狭額縁も失われ、従来のPCに戻ってしまいます。だから下側、つまりシステム側をどれだけコンパクトにできるかにかかっているわけです。

設計では、すべての機能をどのようにして限られたサイズに収めるかを突き詰める一方、ユーザーが使いやすいレイアウトも意識しなければなりません。例えばACアダプターの差込み口一つ取っても、ユーザーはACアダプターを挿しっぱなしで使う場合が多いので、差し込み口はなるべく奥側で、ユーザーの手と干渉しないように配置すべきです。また、ファンの排熱口の位置は、マウスを握る右手に熱風が当たらないようにしなければなりません。それらすべての条件を満たすには、まるでパズルを解くような難しさがあります。

こうしてODDやHDDの場所をコンマミリ単位で切り詰めながら、このサイズに収めていきました。内部を見れば構成部品が密度濃く収められていて、ギリギリまでレイアウトを追求した様子が分かるはずです。

キーボードにもそれは見て取れます。従来の打ちやすさ、位置関係はキープしつつ、ノートパソコンに必要なキーストロークとキーピッチも維持しています。モバイルはキーとキーの間が狭くなって打ちづらいこともありますが、「NEXT」はユーザーが窮屈さを感じないようなレイアウトにしました。一番触れるところだからこそ、徹底的に使いやすさにこだわりました。キーボードを押した時の音にも特徴があります。従来26デシベルだったものが、「NEXT」では20デシベルになっています。6デシベルの差は、人間にはおよそ半分の大きさと感じられるほど静かなレベルです。

ユーザーの求める「速さ」をとことん追求

飛田：ユーザー調査の中でパソコン購入時に重視するポイントを聞くと必ず挙がるのが「速さ」です。基本的には「起動の速さ」や「処理能力の速さ」ですが、「NEXT」はまさにこの「速さ」に最大の強みがあります。「NEXT」はNECの上位機種として、とにかくハイスペックであることにこだわりました。

CPUは最新の第8世代。前の世代からパフォーマンスは40％向上しています。最新のハイスペックCPUを使っていますので処理能力は申し分ありません。それに加え、SSDは内部の接続方式にPCIe（PClエクスプレス）を使ったSSDを採用しているので、よく使われるSATA接続のものと比べ約5倍の速さを持っています。その接続方式は、15インチノートで採用したのは「NEXT」が初めてです。

CPUはまた、低電圧で熱が出づらく、ファンの稼働率が抑えられるメリットを生み出しています。静かで快適、そして「速さ」を備えているわけです。

こうした処理の速さによって、ExcelやPowerPointを使った複雑な作業がサクサクできるようになったり、動画編集や高画質動画の再生も高速できるようになります。

従来デスクトップを使っていた方やクリエイティブな仕事をしている人が快適に使えるノートパソコンはそう多くありません。

われわれはこれからもユーザー視点を最も大切な要素として、ユーザーの不満や、「もっとこうなったらいいのに」というニーズに対して、「これが解決策です」というパソコンを作り続けていきたいと考えています。

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