今やビジネスに欠かせないツールとなっているプリンター。レーザープリンター、インクジェットプリンターなど、各社から様々な製品がリリースされる中、「LEDプリンター」というジャンルを確立し、支持を集めるのがOKIデータだ。

　同社は1981年、世界に先駆けて卓上用LEDプリンターの開発に成功。以来、30年以上にわたって製品の改良を続け、LEDプリンター市場をリードする存在となっている。

　「我々が日本電信電話公社（現 NTT）と共同でLEDプリンターの開発に着手したのは1977年のこと。コンピュータのアーキテクチャがメインフレームからサーバに移行し、連続紙からページ単位での印刷に市場ニーズが移りはじめていた頃でした。それにあわせて、それまで主流だったインクリボンを用いる機械式プリンターに代わって、レーザープリンターが普及の兆しを見せており、競合他社との差別化を図るために我々が取り組んだのが、LEDプリンターの開発だったのです」とOKIデータの遠藤浩氏は語る。

　実は当時、LEDプリンターの開発に取り組んでいたのは、OKIデータだけではなかった。国内だけでも複数のライバルがいたという。しかし “ある問題”によって、各社の開発は難航していた。当時のLEDはまだ製品ごとの光量のばらつきが大きく、プリンターに使うには大きな障壁があったのだ。

　「そんな中、OKIが先駆者となった決め手は、半導体製品を扱う技術でした。LEDは半導体製品ですが、当社の前身であるOKIは、1965年にはLEDの研究をスタートさせています。そうした技術の蓄積が課題解決に役立ちました。具体的には、LEDプリンターでは数千個のLEDを並べて光源としますが、光量のばらつきの原因である格子欠陥を皆無にするのではなく、逆転の発想で格子欠陥を分布させることで問題をカバーする方法を確立。半導体技術を下地に、他のメーカーとは違う視点でアプローチできたのです」（遠藤氏）

　こうして完成したLEDプリンターは、レーザー方式にはない様々なメリットをもたらした。

　まず、プリンターの筐体を非常にシンプルかつコンパクトに設計することができる。レーザー方式は、レーザービームという1つの光源をミラーで左右に振り分けて、感光ドラムに照射させている。そのためのモーターなどの機構が必要になるため、内部構造が複雑になり、筐体も大きくなってしまう。これに対しLEDプリンターは、感光ドラムに光を直接照射するため、ミラーなどの中間機構は不要。感光ドラムまでの距離をわずか数ミリメートルに設定でき、筐体を小さくできるのだ（図1）。

　次に、光を振り分ける動きと時間が不要なため、高速にプリントできる。さらに、画質という面でもLEDのほうが高精細だ。「レーザー方式は光をプリント面に振り分ける際、焦点距離差によるドットの質の低下が発生します。対してLED方式は、至近距離からまっすぐにかつ一斉に画像を書き込めるので、極めて高精細な描画が可能になるのです」と遠藤氏は説明する。つまり、シンプルでコンパクト、プリントの速さと美しさ。こうした利点を兼ね備えているのがLEDプリンターなのである。

　内部構造がシンプルなLEDプリンター・複合機は、「メンテナンスが容易」という特長も持つ。LEDプリンターはレーザープリンターより稼動部分が少なく、構成パーツも少ない。そのため、故障のリスクを低減でき、万が一のトラブル時にも、ユーザー自身で対応・解決できるわけだ。

　「例えば、紙詰まりの際も、感光ドラムユニットを持ち上げるだけで、詰まった紙を簡単に取り除くことが可能です。また、プリントに汚れが出てしまう場合、レーザー方式では専門知識を持った保守員でないと対処は困難ですが、LED方式ならば、ユーザーが自分でヘッド部分を拭いて清掃することもできます」（遠藤氏）

　加えてLEDプリンターは、そのシンプルな構造ゆえに、定期的に必要な部品交換もユーザー自身で行うことができる。従来、トナー・感光ドラムユニット以外の部品交換が発生すると、保守サービスを呼び、対処してもらう必要があった。作業自体は10分で終わっても、保守員が到着するまでの待ち時間を合わせると、1時間以上仕事が滞ることも珍しくない。急いでプリントしなければならないものがある場合、こうした“待ち時間”は致命的だ。

　「内部構造や、構成部品がシンプルなLED方式ならば、画像を定着させる定着器ユニットも、紙を送るベルトユニットも、保守員を呼ばなくても社内の人間が交換できます。プリンター・複合機のメンテナンスは『メーカーの保守員がやること』『精密機械なので自分たちは勝手に触らないほうがいい』。そんな先入観を抱く人が多いと思います。しかし、LEDなら、特別な技術や知識のないお客様でもメンテナンスでき、ダウンタイムを最小限に抑えることができるのです」と遠藤氏は力を込める。

　この特長を生かして、新しい価値を提供できないか。そんな発想から生まれたのが「COREFIDO（コアフィード）」というサービスだ。

　「2008年の発売開始時には、修理コストを心配せずに長く使っていただくため『5年間無償保証』を打ち出しました。それを進化させた『COREFIDO2』では、『メンテナンス品5年間無償提供』を実現。5年間、修理費も、メンテナンスに必要な部品の購入費も、まったく気にせずに使っていただけるプリンターとして提供し、多くのお客様に支持をいただいてきました」（遠藤氏）

　スピードが命とされる現在のビジネス社会で、プリンター・複合機の不具合は、様々な損失を生む。具体的には「経費のムダ（保守・修理費）」「時間のムダ（保守対応の待ち時間）」「ストレスのムダ（トラブル解決までのストレス）」だ。OKIデータではこれらをまとめて「仕事コスト」と定義。そして、この仕事コスト削減をさらに強力に支援することを目指したのが、7月1日に発表された新サービス『COREFIDO3』と、それに対応した新商品A3カラー複合機だ。

　その特長は大きく2つある。1つは、ユーザー自身によるメンテナンス性をさらに高めるために「メンテナンスバリアフリー設計」を採用したこと。そしてもう1つは、本体とクラウドを連携させることで、より適切なサポートを実現する「クラウドメンテナンスプラットフォーム」を採用したことである（図2）。

　まず1つめの、「メンテナンスバリアフリー設計」の採用で実現したのが、「新世代オペパネガイダンス」という新機能だ。これは、本体のモニターパネルを使い、紙詰まりの対処や消耗品の交換などを、写真やアニメーションでわかりやすく解説してくれるもの。「ガイドに従うことで、初めてLEDプリンター・複合機を使う人でも戸惑うことなく作業していただけます。また、部品の定期交換も、時期が近づいたらパネル上でお知らせ。ユーザー自身によるメンテナンスをさらに容易にし、いつまでも快適な状態で使い続けてもらうことが可能になります」と遠藤氏は言う。モニターパネルは、メンテナンス時にカバーオープンすると自動的にユーザー目線に傾くため、ガイダンスを見ながら作業を楽に行うことが可能。ほかに、問題解決までの目安時間を表示する機能も備えているという。

　もう1つの「クラウドメンテナンスプラットフォーム」は、「クラウドガイダンス」と「リモートメンテナンスサポート」というサービスで構成されている。

　「『クラウドガイダンス』は、エラー発生時の最適な対処法を、PCのブラウザーやスマートフォンの画面に表示するサービスです。手順としては、プリンター・複合機をクラウドに接続することで、その状況をクラウド側で確認。そのうえでサポート用画面に対処法を提示します。スマートフォンでも閲覧できることで、PCが利用できない場所にプリンターがあっても、安心して対処できるようになります」（遠藤氏）。さらに、検索性の高いFAQも用意されており、例えばプリンター・複合機から共有フォルダにスキャン画像を送るにはどうすればいいかなど、接続や設定に関する疑問も容易に解決できる。

　次に「リモートメンテナンスサポート」は、電話でOKIデータのお客様相談センターの支援をリアルタイムに受けながら、問題解決できるというサービス。こちらもクラウドと連携させることで、高品質なサポートを実現する。「サポートが必要な不具合で最も多いのは、プリントに汚れが出てしまうなどの画質に関するものです。ヘッドを拭けば解決するものもありますが、別の調整が必要な場合は、ユーザーが自分で適切な対処法を見つけるのが難しいこともあります。そうした時には、汚れが出たプリントの画像をスキャンし、クラウドにアップしてもらえば、お客様相談センターがそれを確認し、適切な対処法を迅速にお伝えすることが可能です」と遠藤氏は説明する。

　もちろん、新世代オペパネガイダンス、クラウドガイダンス、リモートメンテナンスサポートの利用には、別途料金は必要ない。可能な限りユーザー自身でメンテナンスできる商品と環境を用意し、ダウンタイムとコストの削減を支援する。そんなOKIデータの理念を具現化するサービスの一環と位置付けられているのだ。

　「COREFIDO3によって『仕事コスト』の削減をお手伝いし、一社でも多くのお客様に貢献したい」と遠藤氏は語る。ビジネスの現場に様々なメリットをもたらすOKIデータの新サービスCOREFIDO3と新商品は、これまでの常識を覆す新たな選択肢として、共感の輪を広げていきそうだ。