ノンフィクション作家でジャーナリストの堤未果は、アメリカが「9.11」(2001年)に襲われた日、ツインタワーに隣接する世界金融センタービル20階にある米国野村證券に勤めていて、惨劇を目の当たりにした。それだけでなく、身をもってあの阿鼻叫喚を実際に体験した。 彼女は人が一生に一度も体験する必要のない「地獄」を見たのである。 それからのアメリカは狂気だった。 米政府は「対テロ」政策を狂ったように最優先して国民を締めつけ、社会は恐怖をあおった。アメリカは一夜にして根底から変わってしまった。 人々は争って銃を買った。あらゆる表現手段が監視の対象になった。対テロ政策にすこしでも懸念を示した者は、連行さ