昭和40年(1965年)、長崎県の佐世保市から18歳で東京に出てきてから、もう57年になる。半世紀以上だ。 しかしそれだけいても、東京の人間になったという気がまったくしない。もっとも、そのうちの45年ほどは埼玉に住んでいるのだが、埼玉人になったという気はなおさらない。 わたしは大分県の佐伯という町で生まれた。3歳頃にはおなじ大分県の竹田という町に転居した。滝廉太郎の「荒城の月」で知られる町だ。 そこに小学3年(9歳)までいた。いまでも一番懐かしい町というと竹田であり、わが故郷というと、その町になる。 人はその後の人生をどこでどのように過ごそうと、10歳頃まで育った場所の記憶が心身に沁みつき、そ