IoT(Internet of Things)の最新ニュースや企業&ベンチャー事例(ケーススタディ)ほぼ毎日掲載

イノベーション
2017.02.14

「ゴープロ」成功に隠された市場のゲームチェンジ
IoT時代、<企業間競争のゲームルール>が変わる

BY

ゴープロ(GoPro)の顧客は、製品そのものよりも、それを使うことで生まれる「エクスペリエンス」にお金を払っているという。(写真はイメージ)

 IoTという「破壊的イノベーション」(Disruption)から生き残るために、すべての企業はAIで武装したハイテク企業へと業態を変革する必要に迫られる。

 企業は自らの「なりわい」をどういう方向に進化させたら良いのか? 企業に強く求められるのは、視点を企業主語からお客さま主語へと180度転換し、お客さまの気持ちや行動の変化に真摯に向き合う姿勢に他ならない。

(参照:前回記事「巨大企業をなぎ倒していくIoTの凄まじい衝撃」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47868

サービス・ドミナント・ロジック

 例えば「自動運転サービス業」というIoT技術を基盤にした新規ビジネスにおいては、クルマは特定の個人だけが所有するものではなく、社会の公共財として共有・管理し、頻繁に利用されることによって初めて価値が生じる、という共通認識がある。

 またナイキやアンダーアーマーが導入を推進している「スポーツトレーニングサービス業」では、センサー内蔵のシールやBluetooth通信デバイス、生体データを可視化するタブレット端末などモノ単体に価値があるのではなく、お客さまのエクスペリエンスとデータを統合し、一気通貫したトータルのサービスの形になって初めて価値が生まれるのである。

 企業のマーケティング戦略を研究する立場から、こうした新しいムーブメントをいち早く看破したのが「サービス・ドミナント・ロジック(Service Dominant Logic)」という考え方である(「マーケティングのための新しい支配的論理の進展」、バーゴ・スティーブン・L、ロバート・F・ルッチ、Journal of Marketing Vol.68 2004年)。

 サービス・ドミナント・ロジックは、「モノかサービスか」を二分法で考えるのではなく、お客さまとの価値の共創が起きることを前提にして、モノとサービスを1つの塊として捉えることにその特徴がある。製造業のサービス化や、モノとサービスを一体化させ、お客さまが買った後の使用価値や経験価値を高めることを主張しているという点で、『経験経済』(B・J・パインII、J・H・ギルモア著)や『経験価値マーケティング』(バーンド・H・シュミット著)の考え方とも相通じるものがある。

 また、サービス・ドミナント・ロジックはウーバー(Uber:ライドシェアサービス)やエアビーアンドビー(Airbnb:自宅の時間貸しサービス)に代表される「シェアエコノミー」や、近年、注目を浴びつつある「サービスデザイン」いうビジネストレンドの理論的な背景になっていることはぜひ押さえておきたい。

 こうした考え方に立つと、自ずと「お客さまの定義」と「企業のマーケティングに対するゴール」が大きく変わる。

「お客さまの定義」に関しては、お客さまは「企業の提供する商品やサービスについて対価を払って購入する人」ではなく、「企業(ブランド)が提供するサービスの背景にある考え方に共感し、サービスの利用者であるとともにサポーターでもある人」と定義を改める必要がある。

 また「企業のマーケティングのゴール」については、今までのように競合に対して優位性のある商品やサービスを生み出し販売する「交換価値(Value in exchange)」に注目するのではなく、商品やサービスをお客さまが使用する段階における「使用価値(Value in use)」に注目しなければいけなくなる。「使用価値(Value in use)」とはお客さまのエクスペリエンス、とそのまま言い換えることもできるだろう。

ゴープロの成功に隠された、IoT時代のゲームチェンジ

 ゴープロ(GoPro)の創業者/CEOのニコラス・ウッドマンは昨年7月、新製品のプロモーションで来日した際、日本経済新聞のインタビューでこのように答えている。

「ゴープロの顧客はカメラという『モノ』ではなく、その製品を使うことで素晴らしい作品が生まれるという『エクスペリエンス』に対してお金を払っている。われわれは『製造業』というより『コンテンツ産業』に身を置いていると考えている。ハードウエアは大切だが、あくまでもコンテンツを生み出す過程の入り口にすぎない」

 お客さまの「交換価値(Value in exchange)」から「使用価値(Value in use)」へという生活価値観のシフトを敏感にキャッチすることで、ゴープロは「自撮り」という新しいエクスペリエンスを創出することに成功した。

 そして、エクストリーム(極限状態)な自撮り映像に熱狂するブランドのサポーターの推奨や評価の力によって、ほぼ広告投資ゼロでマーケティングの拡大再生産のループを回すことに成功したのである。

 ここで大切なことは、新しい学説の誕生やテクノロジーの進化ではなく、むしろお客さまの考え方や行動そのものの変化である。ゲームチェンジの手がかりはお客さまの中にある。お客さまが企業のマーケティングを動かす時代がまさに到来していることに注目すべきなのである。

 ソーシャルネットワーク導入(2006年)以降のデジタライゼーションの流れの中で、成功の鉱脈を掘り当てたゴープロのような企業のサクセスストーリーにIoT時代の事業経営やマーケティングを成功に導くヒントが隠されている、と言えよう。

JBPRESS

記事ランキング

  • 直近1時間
  • 昨日

話題のキーワード

注目連載

あわせてお読みください

IoTニュース

ものづくりのポテンシャルとIoTの可能性が未来を拓く! 8/23「北九州でIoT」東京説明会(TeNKYU&採択チーム講演)
日本のものづくり最前線、「研究開発型」町工場の躍進の秘訣を探る -由紀精密社長 大坪正人氏インタビュー
アドバンテック・Behr Technologies・日立・マイクロソフト、インダストリアルIoTコネクティビティソリューションの開発で協業
世界のスマートロジスティクス、トレンドレポート
mtes Neural Networksとジェネラルビジョン、エッジAIソリューション開発の合弁会社を設立
IoT農業を推進するグリーンリバーホールディングス、総額105百万円の第三者割当増資を実施
IoT機器向けのセキュリティベンチマークが登場
重要度高まる「データビジネス」の現在とは【9/14セッション観覧募集中】
IoTで構築した「スマートホーム」は通信を暗号化していても生活をのぞき見される可能性があるという研究結果
コマツのICT建機は農業も変える ―― 石川県で進む「IoTでスマート農業」
“衛星IoT”市場が創成期、新興企業も次々と誕生
国内IoT企業が取るべき行動とは――IDC Japan、国内IoT市場のデータエコシステム事業者に関する調査結果を発表
フランス生まれのIoTスタートアップ「“LPWA先進国”とアジアをつなぐ」
IoT人気記事ランキング|スマートドライブが17億円の資金調達、Embedded Technology 2018など[8/6-8/12]
IDC、国内IoT市場「データエコシステム」事業者調査結果を発表
IoTと非IoTで2025年に163兆GB--データビジネスのエコシステム広がる

IoTニュース”は、Mynd Engineを活用して、世の中のIoT関連の記事をまとめさせていただき、ご紹介させていただきます。