
今から40年前の1985年、通信自由化で通信事業が民間企業に開放されたが、同年に発足したのが日本通信衛星(現スカパーJSAT)だ。89年には日本初となる民間の通信衛星「JCSAT-1」が打ち上げられ、以後、サテライトジャパンやスカイパーフェクト・コミュニケーションズ、宇宙通信との統合や合併を経て今日に至る。現在、スカパーJSATが地球上空3万6000kmで運用する静止軌道衛星は17機に及ぶ。衛星放送事業のほか、航空機・船舶の通信や安全保障、防災・減災まで幅広い衛星のビジネス用途がある中、同社が掲げる「宇宙実業社」に込めた思いや今後の展望について、米倉英一社長に話を聞いた。
──スカパーJSATのビジネスの柱は衛星放送の「スカパー!」を運営するメディア事業と宇宙事業の2つですが、配信動画サービスが広く浸透したこともあり、メディア事業は苦戦しています。
米倉英一氏(以下敬称略) メディア事業はかつてのような勢いこそありませんが、今後も衛星放送がなくなることはありませんし、現在も40億円以上の営業利益を出しています。
当社がやらなければいけないのは、いかにコストを下げながら事業を継続していくかということです。そこで、例えばそれほど視聴者が多くないスポーツ中継を、5G回線やAI技術、ドローンなどの最新技術を総動員して制作すれば、これまで10~20人ほどかかっていたスタッフが少人数で賄えますし、多様な視聴者ニーズに応えることもできます。
そう考えると、ややマニアックでも良質なメディアコンテンツを、どれだけ低コストで安価に提供していけるかといったあたりに今後の商機や活路があると考えています。

── 一方で、宇宙事業はいまや営業利益の8割以上を占め、屋台骨となっています。宇宙事業の今後の伸びしろについて、どのように考えていますか。