骨格の動きを検出して作業者の動作を解析する「骨紋」(三菱電機提供)

 人の動きをAI(人工知能)が的確に捉えるにはどうしたらいいか。三菱電機が出した答えは「骨格」だった。

 三菱電機が開発した新技術の名称は「骨紋(こつもん)」。人の骨格の動きと生産現場の作業内容を学習したAIが、作業者の動きを撮影したカメラ映像を解析し、作業手順ごとにかかった時間を自動で算出したり、手順のミスや漏れを発見したりする。改善の余地がある作業手順を見いだすこともできる。

 一人で複数の作業を行う生産現場の効率を高めようとするなら、まず現状の作業の様子を詳細に可視化する「作業分析」を実施する必要がある。製品の組み立てであれば、棚から部品を取り出す、ねじで部品を組み付ける、外観を検査するといった一連の手順がある。従来は、この作業のカメラ映像を撮りためて、映像を再生しながら作業時間をストップウォッチで計測し、その結果を集計するという作業を行っていた。そのうえで、作業時間にバラつきが生じていないか、特定の手順に時間がかかる傾向がないかなどを調べるのだ。

 一方「骨紋」は撮りためたカメラ映像を使った作業分析にかかる時間を10分の1にまで短縮する。分析時間を短くできれば、生産現場の改善活動を短期間で繰り返せるようになり、従来よりも生産効率の向上を図りやすくなる。

従来9週間を要した作業分析を6日で完了

「骨紋」が特筆すべきポイントは大きく2つある。一つは、AIの学習の手軽さだ。骨紋のAIは、限られたデータ量と短い時間でも、人の骨格の動きと作業内容を関連付けて認識できる。

 分析にあたってはまず、AIの学習に用いる映像に「部品取り」、「ねじ締め」、「外観検査」といった手順の情報と、それぞれの手順の開始時刻/終了時刻を付加する。合計10回分の映像をAIに読み込ませると、AIは10分程度ですべての映像から人の骨格を抽出し、手順ごとの首元、肩関節、肘関節、手首の動きを覚える。