衆院本会議で就任後初めての所信表明演説をする高市首相=24日午後(写真:共同通信社)
(大井 赤亥:政治学者)
「改革反対」勢力と見なされる左派
「保守と革新」は55年体制の日本政治を枠づけてきたイデオロギーの型だが、現在、40代以下の若年世代は「革新」の側に維新を、そして「保守」の側に自民党と共産党をおくという(遠藤晶久)。現在の日本政治は、有権者の世代交代に伴い、旧来の常識では理解できない展開を示している。
不透明な政治において一つたしかなことは、かつての「革新」勢力を引き継ぎ、現在、ジェンダーや反差別、社会保障の充実を掲げて権力を批判する左派やリベラル派が、時代の変化のなかで有権者から乖離し、現役世代にとって「保守的」な人々と映っているという現象である。
現在の日本社会は人口減少や少子高齢化に規定され、快刀乱麻を断つ根本的解決や、利害調整を度外視した革命的決着というのは存在しない。誰が政権を担おうと、行政のとれる政策の裁量は限られており、眼前の課題に対して、プラグマティックな試行錯誤を通じて弥縫策を繰り出していくしかない。
そこにあって、「社会主義」という切り札を失い、権力を担う立場から久しく遠ざかってきた左派やリベラル派は、転じて、行政が提示する弥縫策の弥縫さにこだわり、試行錯誤の錯誤に難癖をつける、悪しき意味での「権力批判」にその存在意義を見出しがちである。それが、55年体制の「革新」の理想を共有しない若年層からは、現実の改革に何でも反対する「保守的」な勢力として映ってはいないだろうか。
現在、現役世代や若年世代からすれば、左派が「保守的」に見える、いわば「保守化する左派」とでもいうような認識が生じているのである。
