日本でも確定拠出年金で老後に備える動きが広がっている。写真はイメージ(写真:umaruchan4678/Shutterstock.com)

ドイツは19世紀末に世界で初めて社会保障という観点での公的年金制度を始めた国だ。1950年代には現役世代が高齢世代を支える賦課方式による財政運営、年金への賃金スライド制などを導入し、日本の年金制度にも影響を与えている。ゆえに日本とドイツの年金制度には共通項が多く、かつ、近年は少子高齢化や低金利による運用環境の悪化という同じ悩みを抱えた者同士でもあった。日本とドイツはほぼ同時期に確定拠出年金を導入しているが、日本の確定拠出年金が好調なのに対し、ドイツの確定拠出年金は岐路に立たされているという。その背景を探った。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

この3年でiDeCo加入者数は1.7倍に

 昨今の日本の投資ブームの火付け役になったのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)といった公的な資産形成支援である。iDeCoは米国の401kという確定拠出年金、NISAは英国のISA(Individual Savings Account)という投資の税制優遇口座をモデルにしたものだ。

 直近では勢いのある改正NISAの陰に隠れているが、iDeCoの人気も衰えていない。2024年3月末の加入者数は328万4971人に上り、3年前の2021年3月末(193万9044人)の約1.7倍に拡大している。

 今年12月からは勤務先で確定給付年金などに加入する会社員や公務員の拠出限度額が月額1万2000円から2万円に引き上げられるほか、加入可能年齢や受給開始年齢、拠出限度額の引き上げも検討されており、耳目を集めそうだ。

 そうした中で今、年金の専門家が注目しているのが、国民の年金に対する考え方や資産運用に対する姿勢が日本とよく似たドイツで、確定拠出年金が岐路に立たされていることだという。

 ドイツの公的年金は日本と同じ賦課方式を採用しており、現役世代の保険料と国庫負担で高齢者への給付を賄っている。ドイツでも高齢化が進んでおり、それに伴い保険料率を引き上げてきたが、1990年代後半には労使折半の保険料率が20%近くに達した。

 さらなる引き上げは難しく給付水準低下もやむなしとなった時、それをカバーする私的年金として確定拠出年金(リースター年金)が導入された。20余年前のことだ。こうした確定拠出年金導入の経緯や時期なども、日本と通じる部分がある。

 リースター年金の主たる対象は、公的年金の加入者である企業の被雇用者とその配偶者。自営業者は一部を除き公的年金の対象外のため、別の確定拠出年金制度(リュールップ年金)が作られている。