「L'Arc〜en〜Ciel 30th L'Anniversary LIVE(通常盤)」(Blu-ray)ジャケット写真より

(冬将軍:音楽ライター)

90年代から現在までの、さまざまなヴィジュアル系アーティストにスポットを当て、その魅力やそこに纏わるエピソードを紹介していくコラム。今回は今もなお絶大な人気を誇るバンド、L’Arc〜en〜Ciel。“黒”が主体だったシーンに“白”をもたらした大重要バンドである彼らの1990年代に注目し、失われないカリスマと特異とも言える音楽の魅力を探る。(JBpress)

シーンに“白”をもたらした

 L’Arc〜en〜Cielは、それまで黒服系と呼ばれるほど“黒”が主体であったヴィジュアル系黎明期シーンに、“白”をもたらした大重要バンドである。後年、ヴィジュアル系シーンの中に“白系”とばれる細分化した区分が生まれるわけだが、それはL’Arc〜en〜Cielなくしては生まれなかったものである、と言い切ってしまってもいい。

 ただ90年代は“ヴィジュアル系”が拡まっていった反面で、その言葉が「音楽よりも見た目重視のバンド」という蔑称として捉えられていた側面もある。現にL’Arc〜en〜Cielはヴィジュアル系と呼ばれることを良しとしていないため、ヴィジュアル系バンドではない。しかしながら後発バンドに与えた影響を考えれば、同シーンを語る上では欠くことのできないバンドであることは言うまでもない。

 そんなシーンにおいての最重要バンドのひとつ、L’Arc〜en〜Cielについて、センセーショナルな登場からその影響力を含め、激動というべき活動をしてきた、1990年代にフォーカスしてみたい。

大名盤『DUNE』

 L’Arc〜en〜Cielの1st アルバム『DUNE』(1993年)は、まさにシーンに“白”をもたらした大名盤である。オープニング曲「Shutting from the sky」の付点8分ディレイギターによるイントロのゾワゾワ感に始まり、「As if in a dream」の幻想的ながらどこか張り詰めた空気感が一気に広がっていくイントロは、シーンにおける革命の狼煙というべきものだ。

L'Arc~en~Ciel「As if in a dream」(1993年)

 彼らが影響を受けたバンドとして挙げているDEAD ENDを彷彿とさせるプログレライクなハードロック要素や、当時ライブの登場SEとして使用していたアメリカのインダストリアルメタルバンド、ミニストリーの無機的なビート感は随所に感じられるものの、同作品の透明感と幻想的な世界観が差配する作風はその完成度の高さとともに、シーンに大きな衝撃を与えた。

L'Arc~en~Ciel「Dune」(1993年)

 ギターソロはハードロックの趣を感じさせながらも、アルペジオやコードワークはブリティッシュなニューウェイヴの香りを放つ ken。スライドとグリッサンドを駆使し、指板上を縦横無尽に駆け巡るtetsuyaのベースは、従来のビートロックセオリーに則ったルート音でボトムを支えていくスタイルとはまったく異なるもので、新たなベースのプレイスタイルを提示した。

 歌に寄り添い、時として対になっていくそのベースラインは、「ラルクにはメロディが2つ(ボーカルとベース)が存在している」とまで言われたものである。sakura の一切の迷いがない潔いドラミングは、豪快さと緻密さが介在する絶妙なバランスを持っていた。加入直後とは思えないほどの楽曲理解度がそのプレイからうかがえる。そして、hydeは色気のある低音と儚さを感じさせるボーカルで魅了する。