社会課題への向き合い方が問われている。写真はイメージ(写真:Lillac/Shutterstock.com)

(平山 賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

日本でも「森林ファンド」組成などの動きが

 自社の利益だけでなく、ビジネスを営む基盤となる「自然環境」に配慮する企業が目立つようになっている。企業も、環境問題を無視するならば、やがて消費者・従業員を含めた社会全体から「ノー」と言われかねないからである。さらに近年では、地球の生態系(エコシステム)への関心が高まっていることもあり、配慮だけでなく、自らも積極的に温室効果ガスの削減に関与する企業が目立つようなっている。

 長い目で見て、社会課題が解決されずに放置されたままであれば、いずれそれが集積し、企業にとって対応を迫られるようになるはず。その費用は馬鹿にならないため、企業の収益環境が悪化することも視野に入れる必要があるだろう。

 この将来的な費用は「隠れたコスト(=シャドウコスト)」と考えられ、企業業績というミクロの問題は、今や企業の行動を通したマクロの問題となって、再びミクロの問題に打ち返されるようになっているのである。

 さらに、企業業績は、株式投資の成果を通して投資家にも影響していくことも考えねばならない。その際には、機関投資家を始めとした投資家も、社会課題の解決に強くコミットすることが求められるだろう。

 今後わが国でも、新NISA制度を活用した個人投資家が拡大する。機関投資家に限らず多くの人々も、企業業績の背景にある社会課題への関心を高めていく可能性がある。以下では、この動きの事例を紹介しつつ、投資の未来像をイメージしてみたい。

 企業の動きの事例としては、植林や保全を通して気候変動対策に資する森林経営を行う「森林ファンド」組成の取り組みなどがある。森林ファンドで、効率的な森林経営を行えば、その分だけガス排出量を削減できる。そこで、日系企業数社が共同して資金を集め、単なる森林ファンドとは一線を画した「カーボンクレジット」創出を目指したプロジェクトを開始しているのである。