取引停止がロシア経済に与える影響

 中国の銀行がロシアとの取引に応じなくなったことで、ロシア経済にはどのような影響が及ぶのだろうか。

 まず考えられるのは、中国との貿易が停滞することである。中国海関総署の統計より中ロ貿易の動向を確認すると、中国からロシアへの輸出は、直近2024年第1四半期で前年比1.5%増にとどまり、増勢が一服した(図表2)。

【図表2 中国の対ロ貿易収支】

中国の対ロ貿易収支(注)ロシアは二国間貿易統計の発表を停止している (出所)中国海関総署

 これは、ロシアにとっては中国からの輸入となるが、ロシアは中国から完成品のみならず、ロシア国内で完成品を作るための原材料や半製品を大量に輸入している。第1四半期にかけての増勢の一服は、基本的には前年の急増のベース効果が剥落したことにある。中国の銀行がロシアとの取引を停止した影響が出てくるのは今後のことだろう。

 他方で、ロシアから中国への輸出については、そのかなりの部分が原油や天然ガスといった鉱物資源であるが、第1四半期は前年比8.3%増と前期(同12.6%増)から勢いが鈍化しており、減速基調を強めている。

 中ロ間の貿易決済がスムーズにいかないため、ロシアから中国への原油やガスの輸出も、今後はさらに低迷していくだろう。

 いずれにせよ、ロシアと中国の貿易は、今後さらに停滞していくと予想される。中国からの輸入の停滞は、完成品や半製品の供給のひっ迫につながるため、ロシアのインフレを悪化させる要因となる。またロシアから中国向けの停滞が低迷することで、ロシアは貴重な外貨である人民元を稼ぐことができなくなる。