エコハウスは夏が暑いというのは誤解だ(写真:Studio Romantic/Shutterstock)
  • 断熱性能が極端に低い日本の住宅を改善する切り札は「エコハウス」と言われる。高気密・高断熱がゆえに、むしろ夏は暑いのではと考えがちだが、実はそうではない。
  • 家全体の空気の循環が良く、一度エアコンで冷やすと室内気温が上昇しにくい。真冬でも暖房無しで足元の室温を20℃に保つことも。
  • エコハウスで実際に生活してみて感じた、その快適ライフとは。(JBpress)

(高橋 真樹:断熱ジャーナリスト)

※この記事は、『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札 』(集英社新書)から一部抜粋・編集したものです。

前編:酷暑がやってくる!がまんの省エネ国ニッポン、エアコンの性能向上も大事だが、そもそも家の「断熱性能」が悪すぎる

 前編では、日本の住宅の性能が悪いことで、さまざまな問題が起きていることを伝えました。流れを変えるのは、高気密・高断熱の「エコハウス」です。後編では、私自身のエコハウスとの出会いと体感を紹介しながら、一般的な日本の住宅との違いを説明します。また、エコハウスについてよくある誤解についても取り上げています。

 日本では「エコ(エコロジー)」という言葉の定義が曖昧なので、「エコハウス」と聞いてイメージする住宅は、人によりかなり異なります。例えば、「自然素材でできている家」「エネルギーを自給している家(オフグリッドの家)」「エアコンのない家」などを思い浮かべる人もいるはずです。しかし、それらの要素だけでエコハウスと呼べるわけではありません。

 まず、自然素材で建てられていることは、住まい手の健康を維持したり、廃棄するときの環境負荷を減らしたりする意味で、とても大切です。エコハウスの中には、自然素材で建てられているものもあります。しかし自然素材を使っていても、外気の影響を受けやすく、温湿度を保つためにエネルギーを浪費する住宅であれば、エコハウスとは呼べません。

 次に、「エネルギー自給の家」はどうでしょうか。送電網(グリッド)と切り離し、自宅でエネルギーを完全に自給することを「オフグリッド」と呼びます。太陽光発電などを活用して、エネルギーを自給することは大切です。

 でも、そこにこだわりすぎて設備に過剰にお金をかけたり、あえて送電網から切り離したりするのは、経済効率を下げ、緊急時のリスクを高めるためお勧めできません。総合的にエネルギー効率を高め、購入するエネルギーを最小限にすることが合理的です。

高橋 真樹(たかはし・まさき)
1973年、東京生まれ。ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。国際NGO職員を経て独立。国内外をめぐり、環境、エネルギー、まちづくり、持続可能性などをテーマに執筆・講演。取材で出会ったエコハウスに暮らす、日本唯一の「断熱ジャーナリスト」でもある。著書に『日本のSDGs-それってほんとにサステナブル?』(大月書店)、『こども気候変動アクション30』(かもがわ出版)、『ぼくの村は壁で囲まれた-パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)ほか多数。

 3つ目は「エアコンのない家」です。一般的に、「エアコンが嫌い」という声をよく聞きます。実際、「夏場のエアコンによる冷房は苦手ですか?」とのアンケートでは、「とても苦手」「少し苦手」という回答が、過半数の54.9%、女性に限れば64.7%にのぼったことがあります。

 またエアコンには、エネルギー消費が多いというイメージもあります。しかし実際には、エアコンは1台で効率的に冷暖房、そして除湿をこなす優れものです。エアコン以外の冷暖房機器と比べると、もっとも省エネです。そのため、エアコンを使わない家がエコとは限りません。