「男らしさ」と思われていたものは性別と無関係だった

 他の同級生たちも、お互いの考えや境遇を知るうちに変わり始める。

 よねは過酷な思春期と青春期を送ったことから、心を固く閉じていたが、寅子たちと仲間になったことにより、徐々に表情が生き生きとする。よねにとって寅子たちは初めての友人だったのではないか。

 朝鮮からの留学生・崔香淑(ハ・ヨンス)は差別に苦しめられていたが、梅子が女子部入学式のときに輪に迎え入れてくれたお陰で勇気付けられ、通学が続けられた。エンパワメントそのものだった。

 大学から同級生になったヒゲ面のバンカラ学生・轟太一(戸塚純貴)は当初、絵に描いたような男尊女卑主義者だったものの、向学心と正義感の強い寅子たちと接するうち、考え方が一変する。花岡に対し、こう打ち明けた。第19回だった。

「自分でも驚いているが、あの人たちが好きになった。あの人たちは男だ。俺が男だと思っていた強さや優しさをあの人たちは持っている。いや、俺が男らしさと思っていたものは、男とは無縁のものだったのかもしれない」

 轟は性別と性格が無関係であることに気づいた。これもエンパワメントにほかならない。轟は寅子らに個性の尊重を学んだ。やはり現代にも通じる話なのである。

 穂高が女子学生の受け入れに熱心だった理由もこれだったに違いない。女性の視点で弁護活動をする人材の必要性も感じていたのだろうが、それにも増して法律を学ぶ学生たちが相手の心情を酌み取るためには、男女が共に学ぶ必要性を感じていたのだろう。