(英エコノミスト誌 2024年4月20日号)

イスラエルは4月19日、イランのミサイル・ドローン攻撃に対する反撃としてイランの核施設があるイスファハーンを攻撃した。しかしイラン側の迎撃で被害はほとんどなかった。写真はイスラエル攻撃後のイスファハーンの中心にあるナクシェ・ジャハーン広場(写真:ロイター/アフロ)

イランのイスラエル攻撃で旧来のルールが破り捨てられ、同盟国は微妙な立場に立たされることになった。

 効果的ではない行動でも大きな変化をもたらすことがある。

 中東諸国は今月前半、イスラエルが4月1日にシリアのダマスカスにあるイラン大使館構内を空爆して将官2人を殺害した件について、イランが報復に出るのではないかと固唾をのんで見守っていた。

 4月13日夜に実行された攻撃は予想以上に大胆で、計300個を超えるミサイルやドローン(無人機)がイスラエルを狙った。

 死者は出ず、建物などの破壊もほとんどなかったが、その意義が損なわれることもなかった。イランがイスラエルを直接攻撃するのは、これが初めてだったからだ。

 中東は今、再び神経質になっている。

 イスラエルが反撃に出ることはほとんど不可避であり、それがいつ、どのように行われるかに注目した。

 西側の同盟国、とりわけ米国は味方を防衛しつつ制止する微妙なバランスを取らねばならない。友好的なアラブ諸国も厄介な立場に立たされた。

 対立の当事者であるイランとイスラエルは、昔から続く交戦のルールが突然廃止された紛争を戦っていかなければならない。

イランの報復攻撃の意義

 イランが報復に出ることは誰も疑っていなかった。

 数カ月に及ぶイスラエルの攻撃で、シリアに展開しているイスラム革命防衛隊(IRGC)の指導者層はほぼ一掃されていた。

 大使館構内の領事部の建物が攻撃されたことで強硬派の我慢は限界を越え、強力な反撃を要求した。

 だが、大半の部外者はイスラエルも含め、イランの報復はそれほど直接的なものにはならないだろう、イスラエルとは直接対決を避けて代理勢力を通じて戦うという長年の方針が堅持されると考えていた。

 イランの攻撃は何日も前から「予告」されていた。おかげで、備える時間は十分にあった。

 イスラエルはもとより、米国や英国、フランス、ヨルダンその他のアラブ諸国が加わったにわか仕立ての同盟にとってもそうだった。

 イランから発射された飛翔体はほぼすべて撃墜された。イスラエル南部のネバティム空軍基地にミサイル4発が着弾したが、損害はほとんどなかった。

 イスラエルの指導者たちは反撃すると明言している。ヨアブ・ガラント国防相は4月16日に「我が国と戦う敵には、何らかの方法で必ず攻撃する。相手がどこにいようと関係ない」と語った。

 イスラエル側の選択肢は、イラン領内の軍事基地に対する同様な攻撃、重要インフラ施設へのサイバー攻撃、IRGCの海外拠点攻撃など様々ある。