テレビのコメンテーターの中には、ビッグモーター事件を解説するにあたって「利ざやの少ない自賠責……」などと発言している方もいますが、そんなことはありません。損保会社にとって、これほど利益率の高い保険はないのです。

 一方で、車検のたびに自賠責に入り直す自動車オーナーとしてみれば、自賠責はどこでも同じ……。

 ちなみに、顧客と対面して契約手続きを行う代理店の手数料は、1契約当たり1735円となっています。損保会社が手にする「社費」の3分の1強に過ぎません。

事故被害者への保険金支払いには極めて冷淡なのに

 私はこれまで、数多くの交通事故を取材してきました。人身事故、特に死亡事故や重度の後遺障害が残る事案に対して、損保会社は実に厳しい査定をしている現実があります。ときには約款上、支払いが認められているにもかかわらず「支払い不能」と切り捨てていたケースもありました。

 保険金支払いが多額になる人身事故では、ときとして払い渋りという過酷な態度をとりながら、自社の収保を守るために「不正」を行う修理工場を優遇するようなことが行われているとすれば大問題です。

 松永氏は語ります。

「今回のことをきっかけに、業界構造全体を変えない限り、第2、第3のビッグモーター問題が生まれる可能性があると考えます」

 自賠責の契約と引き換えに、修理の不正を黙認していたとすれば大問題ですが、そのようなことはないと信じたいと思います。