来るべき時が来た――。
そう表現していいのかどうか定かではないが、人間が創り出したモノがいま人間を凌駕しようとしている。人工知能(AI)である。
特に「AIの父」ともいわれる英ジェフリー・ヒントン氏(75)が最近、ニューヨーク・タイムズ紙の取材で、「今のような規制がないままAI技術を推進していくことは危険」と発言したことで、かねて憂慮されていた人間がAIに「食われてしまう」可能性が取り沙汰されている。
しかもヒントン氏は、「AIをコントロールできるかどうかが判明するまで、これ以上AIの開発はすべきではない」と警鐘を鳴らしている。
人間が人工知能にコントロールされてしまうかもしれないとの危惧は、いまや世界中で共有されるようになった。
ヒントン氏は2013年、トロント大学で人工知能の研究をしていた時、グーグルが強い興味を抱いてヒントン氏と研究そのものが買収された経緯がある。
同社で長年研究を続けて副社長まで昇格したが、今年4月に退社。
グーグルにいる間はAIの危険性について語ることを避けてきたが、退社を機に世間に向けて語り始めた。
同氏は悪意のある人間に利用されることを防止する手立てがないとし、こうも述べる。
「AIは素晴らしい技術であり、医療や新素材の開発、地震や洪水の予測に大きな進展をもたらした」
「しかし、AIをいかに封じ込めるかという点を十分に理解するにはまだ多くの作業が必要になる」
そして、「AIの技術を開発するのと同じくらい、安全性を確認することに力を注ぐ必要がある」と指摘する。