(北村 淳:軍事社会学者)
1月28日から2月4日(米国時間)にかけて、アラスカ、カナダ、アメリカ上空を通過した中国の気球を巡って、アメリカ政府・軍内外ではいまだに侃々諤々の議論が交わされている。
連邦議会共和党をはじめバイデン政権に批判的な勢力は、中国“偵察”気球を撃墜するまで数日間も要した意思決定の遅さを問題にしている。また、国防長官ロイド・オースティン退役陸軍大将や統合参謀本部議長マーク・ミリー陸軍大将をはじめとする軍指導部に批判的な対中強硬派の人々は「あいかわらずの腰抜けぶりをさらけ出した」と攻撃している。
一方、中国政府は「アメリカが中国の民間気象観測気球を戦闘機まで飛ばして撃ち落としたのは異常な過剰反応だ」と米側を強く非難している。
これに対して米軍内外からは、中国も2019年に高高度から中国を偵察していた「外国偵察気球」を殲撃10C型戦闘機1機を出動させて霹雳10空対空ミサイルによって撃墜しており(参考:新浪新聞)、中国側の非難は当たらないと反論している。ただし、その反論に対し中国側からは、中国が撃墜したのは「軍事偵察気球」であって、アメリカが撃ち落とした「民間気象観測気球」とはまったく状況が違うという反論が寄せられているようだ。