(写真はすべて宮沢洋)

(宮沢 洋:BUNGA NET編集長、編集者、画文家)

 私が「池袋建築巡礼」というシリーズを始めた理由の一つに、この建築をちゃんと見てみたいということがあった。ようやくそれが実現した。想像以上の建築だった。アントニン・レーモンド(1888〜1976年)の設計で1956年に完成した「カトリック豊島教会」の聖堂である。

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 場所は池袋駅西口から徒歩20分ほどの山手通り沿いだ(徒歩での最寄駅は西武池袋線の椎名町駅か東京メトロ有楽町線の要町駅)。私はこの建物の前を車で数百回通っており、ずっと気になっていた。だが、敷地内に入ったことはなかった。

 2020年4月にBUNGA NETを立ち上げ、同時に「池袋建築巡礼」をスタートさせた。すぐにここの取材アポを取ろうと思ったが、コロナ拡大による緊急事態宣言で教会の礼拝は中止に。それからも時折、教会のサイトをのぞいてはいたものの、そのたびに使用を制限している様子が伝わってきたので、様子を見ていた。

 国の制限が解かれ、そろそろどうだろうと思ってサイトを調べていたとき、たまたまこの教会の見学会が実施されることを知った。「まちなかアート体験」が主催する「【見て学ぶ建築入門】フランク・ロイド・ライトからアントニン・レーモンドまで 豊島区の名建築:自由学園明日館・カトリック豊島教会」という講演会&見学会のイベントだ。企画者の木川るり子さん(まちなかアート体験代表)にお願いして、11月6日に開催される教会の見学会に参加させてもらった。

 木川さんは教会に併設されている幼稚園(聖パトリック幼稚園)の卒園生。豊島区国際アートカルチャー特命大使でもある木川さんが、「建物がアントニン・レーモンドによりつくられた素晴らしいものだという事を一人でも多くの地元の皆さんに知ってほしい」という想いで企画。教会と交渉して見学会を実現した。私はアポ取りの苦労をせずにそれに乗ったというわけで、木川さんに大感謝である。

 当日、現地を案内してくれたのは、建築史家の和田菜穂子さん(東京建築アクセスポイント代表理事、東京家政大学准教授)。贅沢なガイド付きで、いろいろ調べる手間がはぶける。

作品集に載っていないツウ好みの建築

 冒頭に「想像以上の建築であった」と書いたのは、なめていたわけではなく、この教会に関する建築的な情報がほとんどないからである。私の知る限り、どのレーモンド作品集にも載っていない。真剣に調べれば何かには載っているのかもしれないが、これの少し前に完成した「聖アンセルモ目黒教会」(1954年竣工)があらゆる作品集に載っているのとは対照的だ。