ドイツの風力発電プラント。ドイツの再エネ発電の半分は風力で、これ以上、増やすのは難しいと見られる(写真:picture alliance/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 ロシアが欧州連合(EU)に対して、天然ガスの供給を段階的に削減している。

 ロシアは4月以降、EU各国の需要家に対して、ロシア最大の天然ガス企業である国営ガスプロムの金融子会社ガスプロムバンクに口座を開設し、ルーブル建てで決済するよう求めている。少なくないEUの国が、この措置に対して反発した。

 その結果、ロシアは4月末にブルガリアとポーランドに対して天然ガスの供給を停止した。5月末には、オランダとデンマークに対してもロシアは同様の措置を取った。

 一方で、ロシア産の天然ガスに対する依存度が高いドイツとイタリアのエネルギー企業はガスプロムバンクに口座を開設し、ロシア産天然ガスの輸入を続けた。

 ところが、6月に入るとガスプロムはドイツに対してもガスの供給を削減するようになった。具体的には、ガスプロムは6月15日と16日の二回にわたり、バルト海経由でロシアからドイツに天然ガスを輸送するガスパイプライン「ノルドストリーム1」の供給を削減した。この措置で、同パイプラインの輸送量は通常から6割減少した。

 ドイツ最大のロシア産天然ガス輸入業者であるウニパーも、ロシアからの供給が契約水準より4分の1減少していると発表している。ガスプロムはカナダで修理中のドイツ重電大手シーメンス・エナジー機器の調達の遅れを削減理由に挙げているが、ドイツはこれを否定し、価格の吊り上げ工作であるとロシアを批判している。

 ロシアが天然ガスの供給を意図的に絞っているなら、これは「兵糧攻め」に等しい。EU統計局(ユーロスタット)によれば、EUの天然ガスの総供給量(生産+輸入)に占めるロシアからの輸入比率は2020年時点で34.4%に相当する。そのほとんどがパイプラインによる陸上輸送であるため、兵糧攻めの効果は大きい。