(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「米国で共産主義が力を強めつつある」
こんな警告を聞けば、奇異に感じる向きが多いだろう。共産主義の排除が米国の伝統のはずだからだ。実際に米国共産党というのも存在こそするが連邦議会では1議席も保有していない。
東西冷戦においては、米国は共産主義のソビエト連邦を敵視して、あらゆる面で対決してきた。1991年にソ連共産党政権が崩壊し西側陣営は勝利を収めたが、東西冷戦での米国側の思想的なバックボーンとなったのは徹底的な反共の姿勢だったといえよう。
そもそも米国の建国以来の理念、思想、信仰などは、階級闘争や無神論、プロレタリア独裁を柱とする共産主義とは絶対に合致しないとも考えられてきた。アメリカ合衆国のあり方はマルクス・レーニン主義とは水と油の関係にある、という認識が一般的だったのだ。