(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
アフガニスタンを武力制圧したイスラム原理主義勢力のタリバンが新たな暫定政権の陣容を公表してから1週間、米国では、この政権の幹部の多くが米国や国連から完全なテロリストと断定された過激派活動家であることに改めて懸念や不安が高まっている。
とくにいまのタリバン中枢部には、米国への大規模な同時攻撃テロを実行した「アルカーイダ」の残存勢力と密接な絆を保つ人物たちも含まれる。そのため、タリバン支配のアフガニスタンは、今後も米国にとって危険なテロ攻撃の拠点となるという認識が米国で広まりつつある。
バイデン政権の期待を大きく裏切る政権の顔ぶれ
アフガニスタン共和国政権が崩壊しタリバンが全土を制圧すると、米国のバイデン政権は、まず在留米国人と米国に協力したアフガン国民の国外退避に全力をあげ、そのためにはタリバンと協力するという姿勢を示した。その過程において、バイデン政権は米国歴代政権が敵とみなしテロ組織だとも断じたタリバンを敵視しなくなった。同政権の国家安全保障担当のジェイク・サリバン大統領補佐官は、「タリバンは穏健な要素もあり、米国の敵でもない」とまで述べていた。