本コンテンツは、2020年6月26日に全編オンラインで開催されたJBpress主催「Workstyle Innovation Forum 2020 <夏>生産性を高め、イノベーションを創発する!“経営戦略”としてのワークスタイル変革」での講演内容を採録したものです。
慶應義塾大学大学院
経営管理研究科 特任教授
岩本 隆 氏
人は付加価値の高い仕事に注力すべき
本日は、HRテクノロジーを含めさまざまなX-Techビジネスを研究してきた私の観点から、テクノロジーを活用した人材マネジメントについて総括し、ウィズコロナ・アフターコロナを踏まえた直近の動向もご紹介します。
2010年頃からさまざまなX-Techビジネスが成長しており、現在は第四次産業革命と言われるほどの大きな変革期にあります。今日のテーマと深く関係するHRTech(HRテクノロジー)も成長率が高い分野となっており、人材マネジメントにも大きな変化の兆候があります。
日本における人材マネジメントは、製造業が中心であった時代には金太郎飴型とも言われるほど画一的なものでした。一方で、新しい産業が続々と誕生する現代においては、個を生かしつつ組織の生産性を高める人材マネジメントが不可欠になっています。
こうした背景から、国内では2013年頃からHRテクノロジーを活用する取り組みが産学連携で進められており、2016年のHRテクノロジー大賞をきっかけに広く知られるようになっています。
2017年には経済産業省がHRテクノロジーを普及させるための議論を開始。以降、同省では現在まで人材マネジメント研究会を毎年開催しており、単なる労働政策ではなく産業政策として人材政策を打ち出しています。
経済産業省が最初に打ち出した人材政策は、人が目指すべき姿に関するものでした。付加価値の低い仕事はAIやロボットなどを活用して自動化し、人は付加価値の高い仕事に注力するべきというものです。実現するには従業員のテクノロジーリテラシーを高める必要があり、教育に関する政策的な支援も行っています。
その後に打ち出したのは、これから求められる人材マネジメントに関する政策です。経営戦略においては、即応性と中長期の視点を両立する必要性が高まっています。
これに対応するには、人材に詳しい経営者であるCHRO(Chief Human Resource Officer)を置き、経営戦略と連動した人材戦略を実行する必要があるとしました。経済産業省では現在、人材育成などのHRデータの活用を促進する取り組みにも力を入れています。