いつそう決めたのか、もう覚えていないけれど、半年以上先の未来のことは考えないで生きていくことにした。未来のことは、結局分からない。ある程度の予測はできても、確実ではない。そんな不確かな未来のために現在の自分が不安に陥るのは、なんと馬鹿げたことだろう、と思うようになったのだ。
ネガティブな僕は、何かについて考え始めると、決まって悪い方向に思考が傾く。だから、すぐ目の前にやってきた選択肢について、「どの分岐を選ぶか」だけを考えることにしてた。それ以上先のことはできるだけ考えない。そうすることで、なんとか自分の人生を抑え込めていると思う。
世の中には、未来に果敢にアタックして、自らが望む未来を確実にものにする人たちがいる。そうならないかもしれない未来のことなど一顧だにせず、こうと決めた未来に全力で飛び込んでいける人がいる。そういう人を見ると、羨ましいと思うこともある。僕には真似ができない。
今回は、未来に飛び込む勇気を与えてくれる3冊を紹介します。
時空に逆らってでも変えたい未来
『君の時計と嘘の塔』(綾崎隼、講談社タイガ、2015年)
小学生の頃のある致命的な出来事をきっかけに、幼なじみである芹愛との関係が絶望的に断絶してしまった綜士。そこから、人気者だったはずの綜士の立場は地に堕ち、言いがかりをつけられた芹愛もまた、自ら孤独を貫くようになっていく。
そして、芹愛のことが嫌いだったはずの綜士は、いつしか自分が、どうしようもなく芹愛に恋い焦がれているという事実に気づいてしまう。
同じ高校に進学した綜士は、陸上部で活躍しながらもいまだに孤高を貫く芹愛を、陰からずっと見続けていた。そんな綜士は写真部に入り、一騎と親友になった。小学生の頃のあの出来事以来、孤立していた綜士に久しぶりにできた友だち。芹愛の姿を写真に収めながら、一騎との満たされた日々を過ごしていた。
しかしある日、一騎がいなくなってしまう。不可解だったのが、クラスの誰も、一騎のことを覚えていないということだ。担任の教師でさえも例外ではない。綜士には、一体何が起こっているのかさっぱり理解できない。