インドネシアのバリ島で突然の荒天に見舞われた日本人ダイバー7人が流された事故で、まる3日以上経過した17日、5人が救出された。しかし、18日、1人は遺体で発見、残る1人は依然捜索中である(19日昼現在)。
ウミガメの血液を飲んで生き抜いた
美しく雄大な姿で我々を誘う海は時として非情となる。海難事故のニュースは後を絶たない。そんななか、1月末、13カ月もの間、7メートル強の船で太平洋を1万2500キロも漂っていたという男性が、マーシャル諸島に流れ着いた。
その写真を見ると、無人島で4年間過ごした男を演じた『キャスト・アウェイ』(2000)のトム・ハンクスのような髭面。
当初、重度の脱水と栄養障害はあったものの思いのほか元気で、メキシコ在住の漁師だった男性は母国エルサルバドルに帰国した。
13カ月もの漂流という話に疑いの目を向ける者も少なくないが、ウミガメの血液や雨水などを飲んでいたというし、職業柄、海の知識も持ち合わせ、以前から「何でも食べる」人だったとの報道もあるから生き抜けたのかもしれない。
昨年の今頃、劇場公開されていた『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012)は、海難事故で、227日間、トラと漂流を続けた少年の物語。
このヤン・マーテルのブッカー賞受賞作の映画化には、コンサルタントとして現実の漂流体験者スティーブン・キャラハンが参加しているから、ファンタジー映画ながらも漂流生活の一端を感じ取ることができる。
1982年、ヨットで航海中に嵐に遭い難破、救命ボートでの漂流生活を余儀なくされたキャラハンの体験は著書「大西洋漂流76日間」で知ることができる。
生還できた一番の理由は、沈みつつあるヨットから必要度の高いものの順に持ち出した冷静な判断力だった。
漂流生活で最も重要なのが飲料水の確保。基本は雨水となる。もちろん海水淡水化装置があればいいのだが、基本的には、あり合わせの道具でも工夫をすれば、少量なら蒸留の原理で海水から飲料水を作ることはできる。
しかし、命からがら逃げ出した漂流者は、何ひとつもたず海に放り出されていることも少なくない。