SAPなんでも相談室一体、何をどうすれば
「デジタル変革」?

この相談室では、ERPという、一言では説明しづらいソリューションについて、
SAPのベテラン社員と新卒入社したばかりの若手社員が、皆様に分かりやすく説明しています。

この春から、社長のキモ入りで「デジタル変革推進室」なる部門が発足され、私はマーケティング部門から、こちらに異動となりました。ただ正直、「デジタル変革」のことが理解できず、困っています。
そんな中で、インターネットで調べていたら、デジタル変革に関連した御社の記事を見つけ、思い切って相談したいと考えました。デジタル変革って一体、何なのですか。
(製造D社 経営企画デジタル変革推進室 32歳/男性)

三田さん。私が、かねてから聞きたいと思っていたことを、聞いてくれる方があらわれました。ズバリ、「デジタル変革」って何? です。

それを一口に言えば、最新のデジタルテクノロジーを使って、顧客とのかかわり方や事業のあり方を変革し、新しい価値を創出する取り組み、ということかな。

うーん、抽象的だ~、わかりにくいな~、デジ変。

「デジ変」って、奇妙な略語を使うね(でも採用)。まあ、確かに分かりにくいね。デジ変は、とても広義な言葉だからね。ということで、すごく古い話になるけと、デジ変の分かりやすい例を一つ挙げよう。

何ですか?

銀行のATM(現金預け払い機)。

え、ATM?

これって、銀行の大きなデジ変だった。
それで何が変わったのかと言えば、消費者と銀行との関係なんだ。
具体的には、ATMの普及で、銀行が、消費者のお財布代わりに機能できるようになった。ATMの普及以前、銀行で預金を出し入れするのに、通帳と印鑑を持って銀行の窓口に行き、結構な時間待たされるのが普通だった(らしい、私もあまり記憶にないが)。なので、銀行をお財布代りに使うなんてありえなかった。それを、ATMがガラリと変えたわけ。また、ATMで銀行の窓口業務のかなりの部分が自動化され、銀行にとっても大きな合理化につながったと言える。

うーん、言いたいことは分かるんですけど、私は普段から電子マネーを使っていて、ATMを使うケースなんてほとんどないんですよ。なので、今の話はあんまり響かないなー。相談者の方もそうですよ、きっと。

え~、そうかな~、デジ変を語るうえで、すごく分かりやすい事例だと思うんだけど(そもそも、皆が、自分と一緒だと思うなよ)。それに、その電子マネーにしても、あるいは、スマートフォンをクレジットカード代りに使う「スマホ決済」の仕組みにしても、消費者と金融サービスとのインタフェースをデジタルテクノロジーで変革し、消費者にこれまでにない利便性を提供して、サービスのあり方、サービスを提供する側の業務のあり方、ひいてはお金の流れそのものに変革のうねりを巻き起こす、という点ではATMと同じなんだけど。

でも、ATMは古いから、「デジ変」感に欠けますね。
あ、そうだeコマースなんかは、どうですか。これもデジ変ですよね?

そのデジ変も、新しくはないかな。これは、消費者と店舗機能との接点(インタフェース)をデジタル化し、(販売という)サービス業務を自動化する種類の変革だね。成功の大きなカギの一つは、やはりインタフェースをどうデザインするかにあると思う。

そう言えば、今回の相談者は製造の方。なので、製造業のデジ変って何かを示さないと回答にならないですよね。

そうだ、そのとおりだ。ただし、この話は少し複雑になるから、まずは、デジ変には大きく2つの方向性があると考えようか。1つは、既存の事業に最新のデジタルテクノロジーを取り込み、収益増につなげたり、新たな付加価値を創出したりする方向性。もう一つは、デジタルテクノロジーをテコに、まったく新しい事業を立ち上げてしまうという方向性。

なるほど。

では、前者の方向性を製造の事業に当てはめてみよう。これまでの製造の事業モデルをすごく単純化して言えば……あ、そうだ、製造の事業モデルを抽象化したスライドを使おうっと。少しの間、PCの画面を見ながら話を進めるよ。

この図のように、製造の事業モデルを単純化して言えば、モノを企画して、設計し、試作品を作り、検証して、ゴーを出し、受注し、必要な部材・資材を調達して、製造の工程に流し、検品して、流通・物流に乗せ、顧客や小売店に届ける、といったものだよね。

ええ、何となく、理解できます。

で、このフローのどこかに最新のデジタルテクノロジーを取り込むことで、さまざまな変革が起こりえる。例えば今、製造業界では、デジタル空間でモノの設計から検証までを済ませてしまい、試作品の作成をスキップするという取り組みが活発化している。また、ある種の製品なら、製造・物流の工程までをスキップして、3次元の設計図だけを流通させ、店舗の3Dプリンタで商品を出力することも可能だよね。

そうですね。

それから、これはマーケティングの話になるけど、最近の家具メーカーの中には、AR(拡張現実)という技術を用い、自社製品を使った生活を実体験させる、なんて取り組みを行っているところもあるらしい。

…なるほどー......。

検品だって、コンピュータに高感度の「目(センサー)」を付けて、チェックさせたほうが、より確実に、かつスピーディに不良品を検知できるようになるし、生産にかかわるあらゆる情報を集めて分析することで、不良品ななぜ発生するかの究明も早まる。

……そうなんですね~…うん、わかる、わかる。

ほかにも、知性を持ったロボットで、生産ラインの自動最適化も可能になるだろうし、製品そのものから、いろんなデータを集めてユーザーサービスに結び付けたり、自動車や建機のように製品自体をデジタルテクノロジーでインテリジェント化したりと、もうデジタルテクノロジーによる変革の可能性は山ほどあって、製造企業の多くがそれに取り組み、成果を上げつつある。

……。

実際、最近の建機はすごいんだぞ、3次元の完成形データを基に………あれ、おーい、落合さん、聞いているかー。

はい? ああっ、聞いてます、聞いてます。

寝てたろ、今。

いや、えっと、まあ、デジ変はすごいんだぞ、と。

なんじゃ、それは(泥酔サラリーマンか、キミは)。これから、デジタルテクノロジーをテコに、新事業をどう立ち上げるかの話に突入しようと思ったけど、今日は無理だな(話は、より難解になるし)。次の機会に持ち越しだ。

ええ~、そんなあ。

「そんなあ」じゃないだろ。これ以上話を聞かせて、知恵熱出されちゃ大変だもの。まあ、デジ変は難しいから、相談者への回答は、私からしておくよ。

すいません。でも、「デジ変」なんて略語使ったら、先方に失礼ですから、気を付けてくださいね。

使うわけないだろ!(人への気遣いの方向感が、まったくつかめん)

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