MONACO発売50周年記念ビジネスメディア連合特別企画
現代ビジネス / JBpress / 東洋経済オンライン
日経ビジネス電子版 SPECIAL
MONACO発売50周年記念ビジネスメディア連合特別企画
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1969年、日本がGNP(国民総生産)で西ドイツを抜いて世界2位となった年、世の中ではとても印象的な出来事が起こっていた。アメリカ・ニューヨーク州では4日間に渡り、初の大規模野外コンサート“ウッドストック・フェスティバル”が開催され、愛、平和、反戦を主張する若者たちが約40万人集結。アメリカのカウンターカルチャーを象徴するイベントとして現在も語り継がれている。映画界でも、『イージー・ライダー』『明日に向って撃て!』『真夜中のカーボーイ』などに代表される、いわゆる“アメリカン・ニューシネマ”が誕生している。反体制的な若者の心情を表現した、それまでにない映画であった。また、アポロ11号が人類初の月面着陸に成功したのもこの年で、日本でも宇宙開発事業団が発足している。さらに佐藤栄作首相が訪米し、3年後の沖縄返還合意を取付けてもいる。つまり、世界においても日本においても、69年は革新的な出来事が数多く起こった年でもある。それは時計界も同じで、新しい駆動方式“クォーツ”が登場し、機械式時計にも“自動巻きクロノグラフ”という画期的なムーブメントが、ホイヤー、他時計ブランド4社による共同開発によって初めて誕生したのである。そして、開発されたその「キャリバー11」は、世界初のスクエア型防水スポーツウォッチ「モナコ」に搭載されるのである。
ピーター・フォンダとデニス・ホッパーによるアメリカン・ニューシネマの代表的作品。密輸に成功し、大金を手にした男が謝肉祭が行われるニューオリンズを目指しハーレーダビッドソンを駆って旅に出る。(PPS通信)
1969年8月15日~17日までの3日間、ニューヨーク州で開かれたロックを中心とした大規模コンサート。約40万人の観客を集めたイベントは60年代のカウンターカルチャーを象徴するものとなった。(PPS通信)
現在も主要なムーブメントとなっている自動巻きクロノグラフムーブメントが開発された1969年。タグ・ホイヤーはモナコだけでなく、オータヴィア、カレラにも搭載された。写真は当時のドイツの広告である。

1950年代から70年代にかけては、数多くのスポーツウォッチが登場している。そのなかには名作と呼ばれ、現在も人気を継続しているモデルもある。ただそれらのほとんどは、ラウンド型ケースのモデルである。つまりスポーツウォッチというカテゴリーでは、スクエア型のヴィンテージウォッチはほとんど見当たらないのが現状である。理由は簡単で、当時はスクエア型で高い防水性(防塵性)が得られなかったから。そんななか1969年に誕生したのがタグ・ホイヤー「モナコ」だ。それは時計業界の常識を超えた、世界初のスクエア型の防水時計だった。50年経った今日でも、このモデルを超えるスクエア型スポーツウォッチは見当たらず、唯一無二のスクエア型スポーツウォッチといっても過言ではないだろう。そんな「モナコ」を5つの観点から見ていきたい。
「モナコ」が誕生から50年経過した現代においても人気を保っている。1960年代はアヴァンギャルドなデザインが多く見られたが、この「モナコ」も当時はそういった類いの作品と思われていたようだが、いまになって思えば、そのデザイン性は秀逸で、普遍性の高いものであることがよくわかる。特徴は、まずケースがスクエアであること。それにダイバーズウォッチやパイロットウォッチ、クルマを基準に作られたクロノグラフでは、ベゼルにタキメーターなど何らかの機能が置かれており、基本的に太いのが常識であった。しかし「モナコ」のそれは、とても細い。これによってダイヤルが大きく使え、バランスのいいレイアウトにすることができているのだ。また、そのダイヤルには程よい余白が生まれ、そこに丸いライン、インダイヤル、ロゴ、日付が美しく配置されている。しかも、ケースから内側に向って、ケース=四角、ダイヤル外周のライン=丸、インダイヤル=四角と交互に形を変えており、それらが絶妙で、バランスがよく、とても気持ちいい。

スポーツには汗がつきもの。つまりスポーツウォッチには、防水性が不可欠である。ラウンド型のものは、通常ねじ込み式の裏蓋でケース裏を閉じる。そして、隙間にパッキンを噛ませ、内部に水分が入らないようにしている。しかし、スクエア型ではねじ込み式裏蓋は難しい。そこで「モナコ」では、かぶせ蓋式のケースを採用し、その隙間にパッキンをかませるという方法で高い防水性を実現している。どこもやったことのない方法で、防水性というスポーツウォッチの生命線的な機能を実現させるというチャレンジ。これも「モナコ」の表に出てこない革新のひとつだといえるものだ。この構造は現在も採用されており、技術の進化によって現在は100mというダイバーズウォッチ並みの防水性を実現するまでになっている。

初代「モナコ」には、世界初の自動巻きクロノグラフムーブメント「キャリバー11」が搭載されている。これはホイヤー(現タグ・ホイヤー)、と他時計ブランド4社による共同開発した「クロノマティック」と呼ばれるものであった。当時、ホイヤーとブライトリングというクロノ界の二大巨頭が手を組んで共同開発がスタート。この自動巻きクロノグラフは、当時ハミルトン傘下のビューレン製マイクロローター式の薄型自動巻き機構に、ディボア・デプラのクロノモジュールを載せることで、世界初のムーブメントを完成させる。構造上、左リュウズになったが、自動巻きなので大きな問題ではなく、これもまた大きな特徴となる画期的な腕時計に仕上がったのだ。

69年に誕生し、70年代に人気を博した「モナコ」も、時代とともにタグ・ホイヤーが他のコレクションにシフトしていったこともあって、次第に生産されなくなっていった。しかし、1997年に5000本の復刻限定という形で復活するのである。さらに99年位は3カウンターモデルが、2002年以降は2カウンター仕様でレギュラー化される。09年にはムーブメントを一新し、左リュウズ使用も限定で復活する。この左リュウズモデルは、15年からレギュラー化し、現在も人気を博している。

「モナコ」というモデル名は、地中海に臨む世界で2番目に小さい国、モナコ公国からとられている。ただ、それはモナコという国自体というよりも、モータースポーツとタグ・ホイヤーとの関連性から、世界三大レースのひとつF1モナコグランプリを意識してのものだった。そんなモナコを一躍有名にしたのが、スティーブ・マックイーンの主演作である『栄光のル・マン』(71年)。ル・マン24時間レースを題材にしたカーアクション映画の劇中でマックイーンが身につけていた腕時計が「モナコ」で、この着用がきっかけでこのモデルは世界的に大ヒットしたのである。スクエアケース、ブルーダイヤル、赤い挿し色というデザインが、画期的だったのは言うまでもないが。

このモナコは、ベースとなるムーブメントにクロノグラフのモジュール載せたもので、左側(逆側)にリュウズという珍しい構造となっている。左利きであったマックイーンは右手に時計を装着していたので、とても使いやすかったのではないだろうか。このモデルは、2015年にオリジナルに忠実に作られ、かつてと同じ名の「キャリバー11」を搭載。“左リュウズのモナコ”が再現されている。
・自動巻き
・SSケース
・39×39㎜
・100m防水
63万円(税抜)
定番モデルのひとつとして人気となっているのが、右リュウズの「モナコ」。この原型は2009年にモナコ誕生40周年を記念して発表された「キャリバー 12」を搭載したモデルである。輝きのあるサンレイ仕上げの文字盤に、ダークネイビーのアリゲーターストラップを合わせた洗練された印象。ビジネススタイルにも合う。
・自動巻き
・SSケース
・39×39㎜
・100m防水
57万5000円(税別)
『栄光のル・マン』で、スティーブ・マックイーンの運転するレーシングカーや着用しているレーシングスーツにも「ガルフ」のエンブレムがついている。ガルフとはアメリカの石油メジャー、ガルフ オイル インターナショナルのことで、タグ・ホイヤーとパートナーシップを締結している。実は過去にも何度か“ガルフ エディション”は発表されているが、こちらはスティーブ・マックイーンが着用していたモデルの復刻版をベースに、ガルフカラーのストライプを合わせた初のモデルとなっている。
・自動巻き
・SSケース
・39×39㎜
・100m防水
63万円(税抜)
MONACO THROUGH TIME - 4TH DICADE
モナコ50周年記念モデル
2019年、モナコの誕生から50周年を記念して、タグ・ホイヤーは5つのリミテッドモデルからなる限定コレクションを発表する。誕生からの50年を10年毎に分け、その時代のトレンド、スタイル、カラー、スピリットなどからインスピレーションを得たモデルを順次発表。レースに関連した場所での発表も「モナコ」相応しく、名機「モナコ」の価値と50周年を鮮明に彩っていくのである。


