SX、DXなどの取り組みが進む企業も増えているが、大企業の経営課題は複雑化し、サステナビリティやデジタルといった一面だけでは解決できなくなっている。そこで、みずほリサーチ&テクノロジーズでは、戦略コンサルティング部内に、「SX / DX 戦略共創チーム」と名付けた組織を立ち上げている。〈みずほ〉グループ全体の共創、お客さまとの共創の2つセットで大企業の課題解決を行うのが大きな特色だ。
「戦略×専門」
〈みずほ〉グループ横断で
共創する
〈みずほ〉グループ横断で
共創する
みずほリサーチ&テクノロジーズは2022年4月、「SX / DX 戦略共創チーム」を発足させた。それまで、「オープン&コネクトチーム」という名称だったが、さらに具体的にSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への対応を打ち出した。背景には、お客さまである大企業が取り組むべき経営課題の変化がある。
SX / DX 戦略共創チーム 上席主任コンサルタントの斉藤智美氏は次のように語る。
「最近では、大企業の経営課題が複雑化し、サステナビリティだけ、デジタルだけといった一面だけでは解決できなくなっています。また、大企業は、サステナビリティの視点で経営の舵を取るにあたり、個社で解決できる経営課題のみならず、さまざまなステークホルダーと共創することが前提の経営課題に対して自らの経営戦略を組み立てなければいけません。当社には脱炭素やSDGsなどのサステナビリティに強い専門チーム、DXやシステムに強い専門チームがそれぞれあります。しかし、このような立場に置かれている大企業に対して十分な解決策を提示するには、当社の中の専門チームの知見のみならず、必要があれば、銀行をはじめとした〈みずほ〉グループ全体のさまざまな知見を横串で提供し、経営戦略の視点から課題解決に向けてお客さまと共創できることが重要です。我々は、「戦略×専門」の視点で、〈みずほ〉グループ全体の知見を結集し、お客さまと共に課題を解決していきます。すなわち『〈みずほ〉グループ全体の共創』『お客さまとの共創』の2つの共創を担うチームです。」
脱炭素に取り組む企業も増えている。そこでは温暖化ガスの排出量算定が必須になる。自社の製品やサービスの環境負荷を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)なども必要だろう。
「環境規制に対応したシステムの導入検討など、サステナビリティとデジタルを掛け合わせる課題について、当社にご相談いただく企業が増えています。当社内には、環境、デジタルそれぞれの専門家、みずほ銀行内には、産業調査部という各産業セクターの専門家がおりますが、それらの知見を個別に活用するのではなく、お客さまの事業戦略における位置づけを的確に把握し、双方の知見を整理しながら支援していく必要があります。」と斉藤氏は紹介する。まさにさまざまなチームの共創によって、課題解決を実現しようとしているわけだ。サステナビリティの視点でDXを支援したり、DXの視点でサステナビリティを実現したりするのである。
「よく言われるように、DXは目的ではなく手段です。前提として大企業の経営戦略があり、それを実現するための手段としてデジタルをどう使っていくかを考えることが大切です。また、サステナビリティの観点でも経営を考えていかなければなりません。その点で、サステナビリティとデジタルが切っても切れない関係になりつつあります」と斉藤氏は話す。
ストーリーをもった
包括的な支援で
その企業“ならでは”を
再認識させる
包括的な支援で
その企業“ならでは”を
再認識させる
斉藤氏が指摘するように、企業において、サステナビリティを経営に組み込むことが求められるようになってきている。
「これまで企業に対しては『とにかく稼いで株主に還元すること』が求められてきました。社会貢献はCSRとして利益の一部を寄付するといった形が多かったのです。ところが、2018、19年あたりから、欧米の投資家からサステナビリティ経営への要請が高まり『社会課題を解決する企業活動そのものを収益の源泉とすべき』と認識が変化してきました。世界のルールが変わったといってもいいでしょう」
ここで特筆すべきは、例えば脱炭素などにしても、目先の数字合わせだけではサステナビリティと認められないことだ。
「事業そのもので社会課題を解決しているかが問われています。そして、その取り組みをきちんと外部に開示しなければなりません。さらには従業員一人一人の行動が最終的にサステナビリティにつながっているかといった一貫性も求められます」
ただし、斉藤氏はこう付け加える。「サステナビリティの経営の組み込みにおける個別課題に都度対応した結果、会社全体としての一貫性がなくなってきているというご相談も多く頂いています。そのようなケースに対処する支援も当社で行っています」。具体的には、経営層、従業員が最も重視している課題や価値観等を明らかにするために、経営者インタビューや従業員アンケートを用いることで、その企業ならではのマテリアリティ(重要課題)、価値創造ストーリーを構築し、それをKGI(重要目標達成指標)、KPI(重要業績評価指標)に落とし込む。
「大切なのは、経営層から従業員まで『腹落ち』して納得できるものを作ることです。そのためにも、『当社は環境を大切にします』といった月並みなキャッチフレーズではなく、その企業だからこそできるアプローチをいかに出すかを重視しています。その過程で、お客さま自身も気づいていなかった強みが再認識されることも少なくありません」と斉藤氏は説明する。まさに、企業理念、マテリアリティ、価値創造ストーリーからKGI、KPIに至るまで一貫したサステナビリティ体系の構築を支援しているわけだ。
「お客さまの強みを生かす」
目線に立った戦略策定
目線に立った戦略策定
政府は2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。企業にとっても、カーボンニュートラルに向け、脱炭素ロードマップを描くことを求められている。
「社会の要請もあり、ひとまず脱炭素の取り組みを進めているという企業も少なくありません。一方で、企業として成長戦略を描く必要があります。そこで『脱炭素と成長を両立させた経営戦略の策定』のご相談も増えています」
ここで難しいのは、エネルギー企業など、業種によっては脱炭素を目指そうとすると本業が縮小してしまう恐れがあることだ。
「お客さまの強みを生かせる事業領域、拡大に向けた打ち手を分析し整理したケースでは、経営層のワークショップを開催し議論を重ねることで、脱炭素と事業の成長を両立させる脱炭素ロードマップを描くことができました」と斉藤氏は話す。
議論の場では、同社から提案された候補事業のほか、複数の選択肢が検討されたという。お客さまの要素技術を生かした新規事業の提案も活発に行われたようだ。
「当社にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)や経済産業省のプロジェクトで技術ロードマップ作りなどに携わっている者もいます。その者にもメンバーに入ってもらい、事業の有望性や既存事業との親和性などについてアドバイスしたことが功を奏しました」
これからの時代、企業が持続的な成長を果たすためには、サステナビリティ貢献度が高く、収益性の高い領域の事業をどれだけ増やせるかが大きな鍵になるだろう。同社には将来を見据えた新規事業支援の実績もある。
「ある資源開発会社は、サステナビリティの目線で改めて自社の事業を考えた際、将来に向けて新たな事業を検討することが必要と認識し、新規事業としてCO2を地中にためるCCSの検討支援を当社に相談されました。そこで当社は、CCSを取り巻く外部環境を調査するとともに、どのようなビジネスモデルを構築するのかといったことも含めてお客さまと一緒に検討しました」と斉藤氏は紹介する。
さらに同社の豊富な知見を基に、まだ市場が形成されていない領域において、いかにして市場を形成すればよいかといった相談にも乗ってくれる。「RFID(無線自動識別)タグを用いたフィジカルインターネット(トラックなどの輸送手段や倉庫の共有)、ドローン(小型無人機)、メタバース(仮想空間)、持続可能な食糧自給生産(植物工場、陸上養殖、培養肉)など、サステナビリティやデジタルの視点から将来拡大が期待される領域での相談にも応えています」というから楽しみだ。今後、これらの領域で成長する日本企業が出てくることが期待される。
調査・提言から
ビジネスの構築・実行まで
伴走型で支援
ビジネスの構築・実行まで
伴走型で支援
SXやDXが企業経営にとって不可欠なテーマになりつつある今、これら領域を支援するコンサルティング会社も増えているが、同社が多くのお客さまに支持されている理由はどこにあるのか。
「当社のお客さまは、〈みずほ〉グループの銀行、信託銀行、証券などのお客さまでもあります。調査や提言で終わるのではなく、お客さまの成長につながるビジネスモデルを構築し実行するまで一緒に伴走するのが私たちのスタイルです」と斉藤氏は力を込める。
将来のビジネスの予想や評価についても、絵に描いた餅ではなく、プロジェクトファイナンスやESG投資の観点から要件などをアドバイスしてくれる。まさに、〈みずほ〉グループの専門家の知見を結集して、大企業の課題を解決するのである。
斉藤氏はさらに「働く環境としても、〈みずほ〉グループには優れている点が多い」と話す。例えばキャリアパスだ。斉藤氏は大学卒業後、みずほ銀行に入行した。同行で法人営業を担当した後、産業調査部に異動。その後、みずほリサーチ&テクノロジーズに転籍したという経歴を持つ。
「企業や市場の調査や分析を活用したコンサルティングに関心があると手を挙げたところ、現在の仕事に就かせてもらえました。〈みずほ〉グループにはさまざまな業種・業態、職種があり、キャリアパスの選択肢も多いと思います。また、〈みずほ〉には結婚・出産した後も働く女性がたくさんいます。私も、産休・育休を取って戻ってきました。子どもは4歳になりましたが、家事も育児も大きな負担なくこなせています。女性のコンサルタントも働きやすい職場です。何より、〈みずほ〉には、チームで力を合わせて仕事をしようという雰囲気があります。引き続き、チームの力を高めて、お客さまや社会の課題の解決を加速していきたいと願っています」と、同社でコンサルタントとして働くやりがいと、今後の抱負を語ってくれた。
「サステナビリティ」をキーワードに〈みずほ〉グループ全体の知見を結集し、お客さまの事業成長を長い目線で支援する「SX / DX 戦略共創チーム」。斉藤氏をはじめ、頼れるコンサルタントが日本の社会課題の解決を加速してくれることだろう。