やっているふりは通用しない
「健康経営」。
経営者の本気度が
企業価値向上に結び付く

GUEST 慶應義塾大学 医学部
医療政策・管理学教室 教授 宮田 裕章氏
Sponsored by 株式会社iCARE
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慶應義塾大学 医学部 医療政策・管理学教室 教授 宮田 裕章氏

新型コロナワクチンの職域接種をきっかけとして、感染症対策が重要な経営課題として浮上してきた。企業経営者、従業員そして医師は健康という課題にどう向き合い、企業としての価値向上につなげていくべきなのか。データサイエンティストとして新型コロナウイルス対策でも活躍する慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏と、産業医であり、健康経営を支援する株式会社iCARE代表取締役でもある山田洋太氏が意見を交わした。

コロナ禍で顕在化した
従業員の体調管理を
企業が配慮する必要性

―― 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、従業員の感染症対策への見方が大きく変わってきました。この点についてどう捉えていますか。

宮田 これまでも「健康が大事」だと言われてきましたが、実際の優先順位のつけかたは人によって多種多様でした。従業員視点で働きたいという意思を優先する中で健康管理をおろそかにするというケースはありましたし、企業視点でも経済合理性を優先してしまうという流れは少なからずあったのだろうと思います。
 ただ、社会の中に制御できない感染症が広がったことで健康への優先順位が変わってきました。例えば「熱があるけど頑張って出社します」みたいなものは、迷惑でしかなくなったのです。感染症に限らず体調管理は本人にとっても企業にとっても大切にするべきことです。その課題が新型コロナをきっかけに短期間で顕在化しました。
 経済合理性だけで動くのではなく、社員の健康やウェルビーイングを大事にしようという流れは以前からありましたが、今ではGDPだけでなく、国内総充実である「グロスドメスティックウェルビーイング」、GDWを指標としようという気運が高まっています。

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株式会社iCARE代表取締役 産業医・労働衛生コンサルタント 山田 洋太氏

山田 新型コロナが社会に大きなインパクトを与えたことは確かですが、その前から従業員と会社の関係性は変わってきていました。それが加速したというのが、この変化の正しい捉え方ではないでしょうか。

 人材の流動化が進む中で人事の方たちからは「ウェルビーイングや健康に注目して従業員との関係性を充実させたい」という声が増え続けていたことは事実です。これまでのようにネガティブな視点から従業員の健康をチェックするのではなく、従業員のニーズに目をむけてポジティブに対応していく時代に入っていると感じています。

データを活用することで
様々な課題が解決できる

―― 従業員のニーズに応えるにはデータが重要になります。ただ、健康データについては個人情報保護との兼ね合いも配慮しなければなりません。どうデータを活用していくべきなのでしょうか。

宮田 健康関連のデータ活用というと、すぐにプライバシーに対する懸念が高まり、マイナスのイメージが強くなりがちです。一方で一部のSNSではプライバシーを気にすることなく利用が広がっています。ユーザーとして個人情報を提供する以上の見返りが期待できるかどうかがデータ活用では重要なのです。
 昨年、国民全員に給付金を一律給付した際に時間もお金もかかって日本のデータ活用の遅れが知れ渡りました。マイナンバーと紐付けてデータが取れていればもっとスムーズだっただけでなく、必要な人に必要なタイミングで必要な支援を提供できたかも知れません。
 健康経営でも同じことです。企業としてここまでやっておけば法律的に大丈夫というエクスキューズではなく、従業員の人たちに豊かに生きてもらうサポートのためにデータを活用していくべきでしょう。オフィスからは離れて働くテレワークでは、データによる健康支援がさらに大切になってきます。

山田 データ活用のメリットはよりきめ細かな対応が実現できることです。過去、非常に多かった感染症である結核は医学の発展とともに姿を消したように見えますが、今でも感染する方がいます。新型コロナと同様に従業員が感染した場合には保健所の方が来て、誰が陽性者と接触したのかを調査します。

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 今は調査対象者をバイネームでリスト化するしかありませんが、テクノロジーの力を使えばバイネームを使うことなく、ハイリスク者を同定することが可能です。データによって個人最適化と全体最適化を両立させることができるわけです。それがデータの持つパワーです。企業経営者はデータ活用をすすめることが個人情報保護にもつながる可能性があることに目を向けていくことが必要です。

企業は産業医と連携して
ウェルビーイングの向上を

―― 健康経営に臨むにあたって、企業経営者と専門家である産業医はどう役割を分担していくべきなのでしょうか。

山田 産業医に期待される要素は二つあります。一つが働く環境で健康を害さないようにすることです。例えば、工場で働いている人が薬品で失明するようなリスクがある場合、こうした誰も望んでいない不幸な事故を起こさないように対策をとること。これは産業医の第一の使命であり、これからも変わりません。
 もう一つは、新たに期待される要素が企業と従業員との関係を深めていく支援をすることです。産業医は健康のスペシャリストであると同時に、組織を良い方向へ動かすアドバイザーとしての役割を果たす必要があります。企業が従業員のニーズを満たすためにどんなサービスを提供していけばよいのかを検討する上で、産業医や産業看護職の意見は非常に重要な位置付けになっていくだろうと考えています。

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宮田 これからはデジタルを使うことで専門家の力の発揮の仕方も変わってきます。データをデジタルでつなぐことでできることは広がってきます。ジェネラルなところで兆候を見つけ、専門医につなぐなど、早い段階から健康に対する適切なサポートができるようになります。
 もうひとつ大事なのはウェルビーイングです。企業というのは病気じゃないからと言って人を歯車のように扱って良い場所ではありません。本来は一人ひとりがその人らしく幸せに生きる世界を、社会やビジネスを通して実現していくような柔軟性が求められています。
 これは産業医だけではアプローチできない部分です。企業は働く人の幸せをもっと広義にとらえつつ、医療・健康のスペシャリストである産業医と連携していくことになるでしょう。

本気で取り組むことで
健康経営が価値を生む

―― 健康経営を企業価値の向上につなげる上で、何がポイントになるのでしょうか。

山田 産業革命以降ずっと変わらなかった資本主義社会を変えるのは、やはり情報革命だと思います。SNSが発達して雇われている人の発言権が強まり、働く場所の選択権も広がる世界になりました。
 企業としては従業員が喜びを感じて働けることを本気で重視して事業活動に取り組むしかありません。健康を支援することはキャリアを支援することと同じです。健康に目を向けて投資することで、従業員を通して社会が事業活動の価値は高めてくれます。
 ポイントは健康に対する価値観が多様化していることです。多様化に対応するにはマンパワーでは限界があり、デジタルの力が必要です。デジタル化を進めて多様化する健康へのニーズに対応しなければ企業価値の中長期的な成長は望めないと思います。

宮田 型通りのパフォーマンスで一定水準を満たした社会貢献をしていれば、企業活動は好き放題していいという時代ではなくなりました。ESG投資やSDGs経営と同じように、企業活動そのものが環境や人権の持続可能性に貢献しているのかが問われているのです。
 強制労働によって原材料を調達している企業に不買運動が起きるように、ごまかしが効かない時代です。ウェルビーイングも含めて健康や働く幸せを追求することがスタンダードになり、そういう企業の方が業績を伸ばしています。やっているふりは通用しません。リスク管理ではなく、チャンスを掴むために本気で取り組むことが求められています。

山田 経営者としてもはや対岸の火事ではありません。健康管理もウェルビーイングも経営に欠かせない社会になったことを受け入れながら、企業価値を高めていくのが王道だと日々実感しています。Carelyはその本気さをデータ活用の側面から支援していきたいと考えています。

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