有高唯之
写真家

有高唯之さんは、ポートレートを中心に活動する写真家。これまでに『SWITCH』『Barfout』『BRUTUS』などの雑誌や広告、CDジャケットなど様々な媒体で、ミュージシャン、俳優、政治家などを撮影するなど、一線で活躍してきた人だ。そんな彼が、仕事をする上で利便性の高い東京から逗子に拠点を移したのが7年前。その理由は何なのか?精力的に仕事をこなす写真家のオンとオフをうかがった。

軽い気持ちで逗子へ

「逗子に移ったのは東日本の震災の後なんですが、とくにそれが理由ではなく、一度ちょっと引っ越してみようかな、くらいの軽い気持ちだったんです。とくにこの場所に思い入れがあったわけではなく、知り合いも全くいないですし。東京に1時間ぐらいで行けるところを考え、アクセスもいいので逗子にしようと」

 同時に、大事な商売道具であるカメラ自体が、フィルムからデジタルへと移行しきった時期でもあった。フィルムで撮影していた時代なら、撮影後に現像という工程を踏まなければならず、どうしても近くに現像所が必要になってくる。それもデジタルになるとその作業は省略され、基本デジタルカメラとパソコンさえあれば、どこへ行っても仕事ができる環境になったのだ。

ノエル ギャラガー
Noel Gallagher SABRA magazine

「もともとアウトドア派でもないですし、東京に住んでた頃は夜遊びばっかりしていました。だから、自然だけがある郊外は飽きると思ったんです。そこそこの街と自然、それに文化があるところを求めたんでしょうね。それで自ずと逗子、鎌倉方面へと気持ちが向ったんだと思います」

 そこそことはいっても、東京に比べれば圧倒的に自然が多い逗子。季節を感じることが多くなったのだという。

「家のまわりも人工物が少なく、自然なものが多いですしね。ウチにフクロウが来ることもあるんですよ。フクロウなんて、なかなか見ないですよね。そういう発見は、やっぱりありますね」

三浦半島をクルマで周る

とくにアウトドア派でもない有高さんだが、それでも三浦半島をクルマで周りはじめた。そして、出会ったのが三崎だったのだ。

「こりゃ面白いと思いましたね。よくぞ残ってたな、って感じです。昭和の頃は、映画館が3つあって、もの凄く潤ってたんですって。銭湯が至る所にあったそうですし。当時は横浜から出稼ぎにきたスナックのママさんたちがたくさんいた、とも聞きました。その名残りがいまも残っているんですよ。漁港だけど文化的な歴史があったことが面白いんです」

三崎の街や人々に魅せられてから、有高さんは度々この街を訪れるようになった。現在は、三崎に仕事場も借り、より頻繁になっており、港へも撮影に出掛けることが多々あるという。

  • 有高氏の写真集『南端』の版元でもあるアタシ社が経営する「本と屯」。経営者のミネシンゴさんは、よき仕事仲間だ。書棚に本がズラリと並ぶが、ここは「書店ではなく、出版社がやってる図書館のようなもの」なのだとか。暖簾の画は吉田戦車によるもの。

 三浦が気に入った有高さんは、それから通い詰め、お酒を飲み、いろんな人と知り合うことになる。それが自身初の写真集へと繫がるのだ。

「三浦市観光協会の会長さんと知り合って飲んだんです。そうしたら、三崎で飲むたびに漁師さんや農家の方達を連れてきてくれるんです。みなさんいい顔をしてるので、“撮りたいなぁ”と思い、お願いしてちょっとずつ彼らのポートレイトを撮りはじめたんですよ。それが2016年の写真展に発展するんです」

 第一次産業に従事する人々を中心に撮ったポートレイト展「三浦の人びと展」は、文化庁の文化芸術推進事業として三崎魚市場を大々的に使用して開催された。そして、この写真展に出品した作品をベースに写真集が制作されることになるのだ。

有高唯之写真集「南端」
アタシ社

「ポートレイトは昨年5月に『南端』(アタシ社)という写真集になりました。版元であるアタシ社のミネシンゴさんは、仲良くさせてもらっているミサキプレッソというカフェの店主に紹介してもらいました。個展での作品は45点くらいだったので、20点ほど撮り足して65点ほどの写真を本にしてもらったんです」

 写真集はマット系の用紙を使って、全ページモノクロームで仕上げられている。しかも、調子の異なる3版を使用し階調を豊かに表現できるトリプルトーンで仕上げている。とても手間のかかった美しい本である。

写真集を出すのはひとつの目標

「写真集の価格は3500円なんですけど、大手出版社の人に見てもらったら7000円以上はつけるって言ってました。でも、採算が取れないから出せないとも言われました。東京に居続けていたら出せなかったでしょうね。写真集を出すのはカメラマンになった時のひとつの目標だったので、こちらに来てよかったです」

三崎銀座商店街にあるカフェ「ミサキプレッソ」は、よく訪れる憩いの場。店主の藤沢宏光さんは、有高氏のよき相談相手でもある。

 有高さんは、最近、逗子の他に三崎にも作業場を借りている。フィルムの時代からプリントが好きで、当時も自分で焼いていたので、暗室を置いた部屋をこちらでも持ちたかったのだそうだ。そして、作業の合間や終了時に、一息入れに港付近のカフェへやってきて、コーヒーやビールを飲みながら一服するのだという。生活のリズムは完全に三浦半島流である。フィルムへの回帰も、この地の環境がもたらしたものかもしれない。

皆既日蝕
トルコ 2006

 写真展、写真集へのきっかけが“飲み”の席からだったように、有高さんの生活には、酒とたばこは欠かせない。東京に比べて喫煙可能なお店が多いのも、有高さんにはあっているようだ。

「東京にいるときも飽きっぽいのか、よく引っ越ししてました。それが逗子にきて約7年ですよ。こっちにきて、オフは増えましたしね。やっぱり、みんなリラックスして仕事をしていますし。オフの時は、三崎へは魚が美味しいのでよく行きますし、鎌倉でもよく飲みます」

  • 鎌倉は、有高氏が夜、度々訪れる飲みの場。小町通と若宮大路の裏路地にある「DRINK A GOGO」は、行きつけの一店。常に音楽が鳴る楽しいお店で、沖縄出身のノリのいい店主と、いつもの仲間で盛り上がる。

  • 「DRINK A GOGO」のほど近く、雑居ビルの一画にある「ヒグラシ文庫」も馴染みのお店だ。由緒正しき立ち飲み屋といった風情で、落ち着いた雰囲気。有高氏の奥方もお店に立つことがあるという。

 三崎は漁港近くの、いわゆる“気持ちいい場所”で魚と一杯。そして、鎌倉では、有高さんには欠かせない“街”での語らいを楽しんでいる。なので、鎌倉ではオープンな立ち飲みスタイルのお店で、常連さんたちと飲むことが多いようだ。もちろん、有高さんの選ぶ店は、喫煙可能なところ。それが、ご自身にとってリラックスできる場所なのである。

水族館劇場「望郷オルフェ」
劇場版ポスター

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