利根川は流域面積が日本一だ。群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、東京の6都県から支流を集めて、東京湾と太平洋に流れ出ている。現在の河川管理者である国土交通省が目指す利根川の治水と利水の姿は、他の河川の例に漏れず、高度経済成長期に描かれたものだ。1947年のカスリーン台風による洪水被害、1964年の東京オリンピック直前の「東京砂漠」と呼ばれる渇水。これらが二度と起きないようにすることだった。 それから半世紀超。水需要の減少や環境保護意識など社会が変わっても、柔軟な方向転換がなされず、取り残された事業の一つが八ッ場(やんば)ダム事業だった。 カスリーン台風を受けて「利根川改修計画」の一つとして国が調査を