政府と日本銀行は、相変わらず日本の課題を「デフレ脱却」に置いている。しかし、これは不思議だ。物価そのものは、コロナ禍前からとっくにデフレではない状況になっている。足元で目標の2%を超える大幅な物価上昇が続いていることは言うまでもない(図1)。 ところが、日銀の黒田東彦前総裁は退任記者会見で、「わが国は物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった」としたものの、「2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現までは至らなかった」と敗北宣言。 そして、植田和男新総裁の下で行われた4月決定会合では、フォワードガイダンスで、2%の「物価安定の目標」の実現について、「賃金の上昇を伴う形で」という