春の陽気に誘われて、久しぶりに旅に出ようと思い立った。 北千住駅から東武鉄道の特急「りょうもう」に乗り、向かった先は北関東だ。太田駅で各駅停車に乗り換えると、日本語以外の会話が聴こえてきた。その会話を聴きながら、手元にある本を読み返す。 これは室橋裕和『北関東の異界 エスニック国道354号線』に登場する一節だ。北関東を東西に走る国道354号線に注目し、その沿線に点在する「異界」を旅するようにめぐったルポルタージュである。著者の旅は伊勢崎に始まり、太田、大泉、館林、栃木県の小山と移動し、県境をまたいで茨城に入り、古河、境、坂東、常総、土浦、笠間、そして太平洋に面した鉾田に辿り着く。 旅のはじまり