現在、日英関係はこの100年間で最も良好である。だが、一方で先の大戦中の日本軍が行ったとされる「残虐行為」のため、反日感情を持つ英国人が少なからずいるのも事実だ。 その日本軍の「残虐行為」としては、捕虜虐待や非戦闘員の殺害が語られることがほとんどである。本稿では、非戦闘員の殺害の例として度々引き合いに出される「アレクサンドラ病院虐殺事件」の謎について述べてみたい。この謎を解くことで日本軍の「残虐行為」がどのように作られていったかを明らかにしたい。 この「アレクサンドラ病院虐殺事件」は実に奇妙な事件だ。日本側にも英国側にも資料がほとんど残っていないのである。 戦後、英軍当局はジュネーブ条約等の国