《月光は何故か 私に希望と安らぎを与えるものである それはあの月を娑婆でも 多くの人が眺めていると思う時 月光を凝視することによって その多くの人と共に自由であるからである》 これは、1966年(昭和41)に静岡県清水市で起きた殺人事件で犯人として逮捕され、死刑囚となった袴田巖さん(87)の獄中日記の一節である。 東京拘置所の死刑囚の独房は4舎2階にあった。窓から顔を少し出すと、月を眺められ、風を感じられた。袴田さんは月光を見ることで、ごくわずかな希望と自由を抱いたのだ。 起床時間は朝7時半。死刑執行の日は、9時までに看守が独房に迎えに来る。看守が来ないと「今日も一日、生き延びた」と安堵し、窓を
冤罪死刑囚の袴田巖さんが得意な将棋を指して取り戻した「現実」
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