令和5年元日の払暁──。まだ日も昇らぬ時刻、黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう/天皇だけが着ることのできる衣装)に身を包んだ天皇陛下は、皇居・神嘉殿(しんかでん)の南庭の一角に、畳を敷いてその周りを屏風で囲った中にいらっしゃった。 その中で陛下は、真冬の底冷えする寒さを感じつつも、四方の神々に向かって拝礼し、五穀豊穣(ごこくほうじょう)と国の安寧、そして国民の幸せを祈願されたのである。 皇室の新年は、この「四方拝(しほうはい)」と呼ばれる宮中祭祀に、天皇陛下が臨まれることで始まってゆく。やがて差し込む初日の出は、皇祖神とされる天照大神が天の岩戸から姿を現し、まばゆいばかりの光を世にあまねく与えた、