ウクライナとクリミア半島が面する黒海沿岸は、南はエーゲ海への入り口ボスポラス海峡を擁するトルコ、西はかつてヨーロッパの火薬庫と言われたバルカン半島、東側にはロシア連邦が取り囲み、地政学上の利害が複雑に絡み合う。 そこは古くから肥沃な穀倉地帯として知られ、絶えず覇権をめぐる争いの舞台となってきた。ローマ帝国、オスマン帝国、チンギスハンの末裔であるタタール人に帝政ロシアと、変転する時代ごとの強大な力によって支配されてきたのである。 19世紀の半ばに起きた「クリミア戦争」は、帝政ロシアとトルコ・イギリスなどの連合軍との3年にわたる大きな戦争であった。 戦闘の地となったクリミア半島での連合軍の戦死者は