20年ほど前、東京のホテルの一室で加持祈祷というのを実際に目の当りにした。加持祈祷とはいわゆる「呪術」である。 加持祈祷を受けていたのは末期癌の老婆だった。 老婆を連れてきたのは、人を射貫くような鋭い眼光を発し一見して侠客然とした風情の男だった。男は老婆の娘婿だという。 男と呪術師とは旧知の仲のようだった。 そして男は「先生、今日は母を連れてきました。母は喉頭癌を患っているのです。医者も、ちょっとこれは難しいと言われまして」と不安げな表情を浮かべて言うのである。 老婆は見るからに衰弱していて、絶望的な感情に苛まれて、生きる気力さえなくしているかのようだった。 現代医学が発展した昨今(このような
空海が唐からもたらした「秘密事相」とは何か
人間が本来持つ病を癒す力は、どう発揮させるのか
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